子どもと大人が共に学ぶ、共創の場

執筆者: 山内 佑輔

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山内佑輔先生は、東京都の小学校で6年間勤務。紙コップ10000個で授業をつくるなど、ワークショップの手法をもちいて、子どもたちのクリエイティビティを育み、実社会と学びを繋ぐ授業をデザインしてきました。
Edupiaでは「創造力を高める」をキーワードに、山内先生の取組みについてお伝えします。第1回目は、どのように授業をつくりだしてきたのか、そしてこれからの時代の「授業づくりに大切なこと」についてお聞きします。

みなさん、はじめまして。山内佑輔です。
僕のキャリアを簡単に紹介します。2005年から大学職員として9年間勤務した後、東京都の小学校教員(図画工作専科)を6年、そして2020年4月から中野区の新渡戸文化学園にてVIVISTOP NITOBEというクリエイティブラーニング環境を立ち上げ、現在その運営を担っています。VIVISTOPって何?という話はまた追ってお伝えするとして、今回は僕自身のことについてお伝えしていきます。
「創造力あります!」なんて決して言えなかった僕が、教員に転職し、図工専科教員として8年間勤務して、今は「創造力あります!」と言うことができるようになりました。 自分で言うのも恥ずかしいのですが、これはすごいことだと思うのです。
創造力は特別な能力や、才能ではありません。本来誰にでもあるものですが、今はそれを忘れているだけです。
センスがない、感性がない、と気遅れしないで大丈夫です。なぜなら、この連載を読んでくださっているみなさんの目の前には、子どもたちがいるからです。彼らが、僕ら大人に創造性を取り戻させてくれるのです。
アートやデザイン、クリエイティビティなんてものとは無縁だった僕が、今「創造力あります!」と自信をもてるようになったのは、子どもたちと一緒に活動をして、子どもたちに教えてもらったからだと考えています。
この連載では、「創造力を高める」をキーワードに、子どもたちと一緒に取り組むためのマインドセットと、共創を生む環境づくりというソフトとハードの両面を、自分の実践例を織り交ぜながら探っていきます。
まずは、僕が図工の先生になりたての頃のお話から始めたいと思います。

2012年秋、小学校教員を志し、大学職員として勤務しながら、通信過程で小学校全科教員1種免許を取得し、2014年3月に東京都公立小へと転職しました。
その際に、図工専科教員として採用されました。今でもなぜなのかは分かりません。採用試験合格後の何かの書面の表記を見て、「こいつはいける!」と思われたのかもしれません。
そんな採用あるの?どうしたら図工の先生になれるの?と尋ねられることもありますが、図工の先生がいる学校は少数派。全国的には「小学校全科」の免許で担任の先生が図工の授業をすることが多いのです。
東京都では、専門的な指導の充実と一人の児童に対して複数の教員がかかわることを通じて、学校での学習や生活の様子を多角的に見ることができるようすることなどを目的に、原則1校に1人図工の先生が配置されています。その体制をつくっているので特別な採用試験もあるのです。そのため、実は東京の図工の先生は中学美術の教員免許をもっている先生が多くその指導にあたっています。
僕は小学校教員免許で図工を担当しているパターンです。僕の中学高校の教員免許は「社会科(地理歴史・公民)」です。でも、小学校教員免許を持っているから、図工を担当できる。そして図工専科教員の仕組みがある東京都で採用されたので、こんな僕が「図工の先生」になっちゃったのです。
2014年3月末、着任直前に、前任者の図工の先生から業務引き継ぎの打ち合わせを行なった際に、当時の僕としてはびっくりする言葉をもらったのを今でも覚えています。
それは「山内さんの好きなことしていいよ!」です。
これには完全に参りました。それまでの社会人9年間「好きに仕事していいよ」なんて言われたことがありませんでした。それよりも、図工初心者の僕にとっては「好き」も何もないのです。絵が好き、紙工作が好き、木工作が好き、版画が好き…美術系大学出身の人なら何かあるのでしょうか。僕にはそれがありませんでした。
創造力を発揮する選択肢を選んでこなかった人生です。この状況はピンチでしかありません。
そこで悩んで考えた結果、とにかくたくさんの図工の授業や造形ワークショップを見たり、体験したり、本を読んだりして学び、その中で僕がおもしろいと感じたものを、子どもたちに「これすごい面白そうだから、一緒にやってみない!?」という授業のつくり方でした。

1番最初に行ったのは紙コップ10,000個でつくる4年生の授業でした。(プログラム提供:山添joseph勇(深沢アート研究所))
ペンはない(描けない)ハサミもない(切ったり、やぶったりできない)中で、紙コップで何をしよう?と子どもたちに問いかけました。
「つまらなそう……」という子どもたちの表情を受け止めた後、「1万個用意したんだけど……」と紙コップを披露すると、子どもたちの表情は一転し、その後は止まることなく、積極的に何度も作り変えたり、つくり続けていました。

こうして子どもたちがつくりだす世界が面白くて、美しくて、楽しくてしょうがない。僕はその場に一緒にはいって、ひたすら感心するしかありませんでした。
「めっちゃ、楽しかったーー!」
「またやりたいー!」「次は何するのー?」
安心しました。何も教えられない、何も教えたことのなかった先生の図工の授業を楽しんでくれました。次回の授業に期待もしてくれました。
「これは子どもたちも楽しそうだったけど、僕も楽しい!授業って楽しい!」と思えた僕の人生初の図工の授業でした。
この授業は学習指導要領(図画工作科編)における「造形あそび」に該当します。

児童は、材料に働きかけ、自分の感覚や行為などを通して形や色などを捉え、そこから生まれる自分なりのイメージを基に、思いのままに発想や構想を繰り返し、手や体全体の感覚などを働かせながら技能などを発揮していく。これは遊びのもつ能動的で創造的な性格を学習として取り入れた材料などを基にした活動。
(小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編より)

図画工作科の目標はものをつくること、絵を書くことでも、その技術向上でもありませんでした。図画工作科の教科の目標である「表現及び鑑賞の活動を通して、造形的な見方・考え方を働かせ、生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力」を育成するのです。
教員の知識・技能は要らないという訳ではありません。大切なのは、授業は教師から子どもに知識・技能を伝達するだけの場ではないということ。これが理解できてからずっと、僕は子どもたちと「一緒にやろう!」とあそびを提案してきたような気持ちです。

見本、お手本はなく、とにかく試して、つくって、壊してを繰り返しながら、「見て、見て!」が飛び交い、さまざまなモノ・コトが生まれていきました。
「そんな方法があるの!?」「そんな発想でるの!?」と毎日想像を超える連続でした。
「ねーねー、これとこれをくっつけたいんだけど、どうしたらいい?」などと相談が来たら、大変。僕は答えを知らないので、調べて試して、一緒に考えます。うまくいったら一緒に喜ぶし、失敗したら一緒に嘆きます。

僕の授業は、僕自身にとっても、創造性を育む場だったのです。「自分に創造性なんてない」と思っていた僕は、毎日その環境に揉まれながら、子どもたちに学びながら、創造性を取り戻せたのです。
これからの図工は、大人(先生)が子どもに教える授業から、子どもと大人が共に学ぶ、共創の場に変化していきます。それこそ、これからの時代に本当に必要な学びなのです。
(本記事の小見出しは、編集者が追記しました)

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