「構造埋め込み型×対比型」で 子どもの思考を耕す

執筆者: 沼田拓弥

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今月は、「立体型板書」を活用した国語授業実践に取り組み続けている遊免大輝先生(「立体型板書」研究会事務局長)と沼田拓弥先生の対話を通して、「『構造埋め込み型×対比型』で子どもの思考を耕す」に迫ります。
板書を工夫することが子どもたちの学びにどのような影響をもたらすのか、2人の対話をもとに一緒に考えてみましょう。

立体型板書を生かした板書

教材:風のゆうびんやさん(東京書籍2年/第7時)
実践者:遊免 大輝(大阪府・公立小学校)
本時のねらい:場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像することができる。

沼田先生:Q:本時の流れを端的に教えてください。

遊免先生:A:「風のゆうびんやさん」は2年生で最初に扱う物語文教材です。複数の登場人物が登場し、6つの場面で構成されています。子どもたちには、それぞれの場面ごとに登場人物たちの行動を具体的に読み取る力を付けたいと考えました。
そこで、まず、導入では「立体型板書」の構造埋め込み型を活用し、板書上段部分に物語の構造を提示しました。「どんな登場人物がでてきましたか?」「手紙をもらえた登場人物は?」とそれぞれの場面に出てくる登場人物や手紙をもらえた登場人物について確認し、子どもたちの学びのベースを整えました。
その後、「手紙をもらえて一番嬉しいのは誰?」と学習課題を提示しました。子どもたちは、ノートに自分の考えを書き、個人思考を行いました。そして、自分の考えをグループで共有し、クラス全体で交流をしました。
全体交流では、登場人物の行動や言動を比較するために、「立体型板書」の対比型を用いて、子どもの言葉を板書で可視化し、整理しました。
授業終盤では、「お手紙をもらうのは嬉しいけれど、お手紙を配る風のゆうびんやさんは、たくさん配らないといけないから、しんどいよね。もう嫌になっちゃうよね。」と子どもたちの思考をゆさぶりました。ゆさぶりを行ったことで、風のゆうびんやさんの様子を読み取ることができ、「配るのも嬉しいし、楽しい。」と中心人物である風のゆうびんやさんの心情に迫ることができました。

板書の型を用いる目的
2つの型(構造埋め込み型、対比型)は目的を明確にして使われています。「何のために板書を用いるのか」がとても重要です。子どもたちの言葉を一つ一つ大切に受け止めながら、一緒に板書をつくる意識も感じます。

沼田先生:Q:「広がり」と「深まり」という視点から子どもたちの思考の変容を教えてください。

遊免先生:A:「手紙をもらえて一番嬉しいのは誰?」という学習課題で子どもたちは思考を働かせ、自分の考えをノートに書きました。そして、「立体型板書」の対比型を活用し、一つ一つ子どもたちの発言を板書で整理しました。「あげはちょうが楽しみにしているのはどうしてわかったの?」「おじいさん犬は、まごが元気にしていることを知ってどんな様子?」など、登場人物の行動や言動について問い返し、子どもたちの言葉を丸印や矢印で関係付けました。子どもの思考のプロセスを板書で可視化することで、「確かにあげはちょうも嬉しそう!」「目を細めたのは、孫を大切にする様子だ!」など、子どもたちの思考の広がりが見られました。
子どもたちの考えを整理した後、「風のゆうびんやさんは、手紙をたくさん配らないといけないから大変だよね。しんどいよね。もう嫌になっちゃうよね。」とゆさぶり発問をし、板書左部分の余白に着目できるようにしました。すると、子どもたちは、「配っているゆうびんやさんは口笛を吹いているし、元気よくって書いてあるよ。」と発言しました。「じゃあ、風のゆうびんやさんは、どんな気持ちなの?」と問い返すと、「嬉しい」「楽しい」と答え、中心人物の様子から心情に迫ることができました。これが、私の感じた思考の「深まり」です。
「立体型板書」の対比型で子どもたちの思考を「広げ」、板書左部分をあえて「書かない」ことで子どもたちの思考の「深まり」を加速させることができました。

子どもの言葉をつないで、思考を広げ、深める
板書で子どもたちの発言を整理しつつ、丸印や矢印を活用することで、言葉が強調され、つながりが生まれます。構造と内容を板書上で結び付けながら、授業終盤では「書かない板書」の発想を活用した展開ですね。「くり返しの行動(配達)=疲れる」という一般的な考えをゆさぶりとして投げかけ、さらに子どもたちの言葉を引き出したところも「板書による可視化」の効果を活かした部分です。板書を仕掛けに思考を耕す授業展開ですね。

沼田先生:Q:板書計画の時には想定していなかった子どもの姿は見られましたか?

遊免先生:A:「おじいさん犬が1番嬉しい」を選んだ児童から「おじいさん犬は孫からもらっているけれど、あげはちょう(パーティーの招待状)と子すずめ(学校がはじまるお知らせ)は知らない人から手紙をもらっているから、1番ではない。」といった解釈には、「知らない人から手紙をもらうよりも知っている人(本教材でいうと親密な関係である孫)の方が嬉しい気持ちになる。」という子どもならではの視点に「なるほど。子どもの想像力は凄いな。」と感じました。
子どもたちの振り返りの記述を見ると、「この授業をやる前と後で風のゆうびんやさんのことをもっとしりたくなった。」「登場人物の気持ちを考えられるようになった。」など、授業前と後の子どもたちの「学びに向かう力」がグッと伸びていると感じました。

教材全体と場面を行き来する
「手紙をもらう」という行為が、単なる手紙の受け渡しではなく、その先にいる差出人との関係にまで想像力をはたらかせたのがすごいですね。まさに、本時のねらいに迫れた瞬間ではないでしょうか。その児童が2年生までの経験として同じように感じたことがあったのでしょうか。気になりますね。
板書は教材全体の内容が俯瞰できるようになっているので、いつでも各場面の内容を比較することができますね。板書に教材全体の内容をシンプルな言葉で整理し、全体と部分(場面)を捉えながら話し合うことで、低学年でも多くの「つながり」を発見する読みの力が育てることができます。

沼田先生:Q:遊免先生は、板書を工夫するようになって、何か変わったと感じることはありますか?

遊免先生:A:板書を工夫するようになって変わったことは、子どもたちの姿や私自身の授業に対する考え方が変わったことです。板書を工夫する前の私は、板書計画通りの授業をしていました。
板書を工夫するようになってからは、「子どもたちはどんな発言をするのだろう?」「あの子たちならこう答えるかな?」など、教材研究や板書計画の段階でワクワクするようになりました。また板書を工夫することで、子どもたちの発言やつぶやきが増え、主体的に学ぶ姿や、学びに対して生き生きとした姿がたくさん見られるようになりました。板書を工夫し、教師自身が楽しんで実践するからこそ、子どもの学びを豊かにするのだと実感しています。

板書を「何のために」使うのか
これは板書だけに限ったことではありませんが、教師の意識の変化は、授業を必ず変えます。まずは変化を恐れずに、「やってみること」が大切です。やってみなければ、いいのか悪いのかもわかりません。
冒頭でも述べましたが、「何のために板書を用いるのか」の意識が変わると、子どもたちの学び方も変化します。アナログツールの代表と言ってもいい黒板とチョークですが、使い方一つで子どもたちとの学びの質は大きく左右されます。子どもたちがうちに秘めている言葉の力を板書で引き出すのです。「あっ、わかった!」「つながっている」という発見や気付きを生み出すツールとして活用しましょう。

沼田先生:Q:遊免先生は、板書を工夫するようになって、何か変わったと感じることはありますか?

遊免先生:A:板書を工夫するようになって変わったことは、子どもたちの姿や私自身の授業に対する考え方が変わったことです。板書を工夫する前の私は、板書計画通りの授業をしていました。
板書を工夫するようになってからは、「子どもたちはどんな発言をするのだろう?」「あの子たちならこう答えるかな?」など、教材研究や板書計画の段階でワクワクするようになりました。また板書を工夫することで、子どもたちの発言やつぶやきが増え、主体的に学ぶ姿や、学びに対して生き生きとした姿がたくさん見られるようになりました。板書を工夫し、教師自身が楽しんで実践するからこそ、子どもの学びを豊かにするのだと実感しています。

アンケートのグラフ化

「対比型」の板書で、子どもたちの思考を比較・整理した後に、再度アンケートをとります。そうすることで、学級全体の思考の変化の傾向を共有することができます。学年が上がるにつれて、タイピング入力が可能となれば、アンケート項目に変容した理由の項目を増やすこともでき、より一人ひとりの思考の変化も共有できます。

板書写真C
振り返り例

ICTの活用で学びをクリアに
アナログなツールを用いているだけでは、共有できない部分に迫ることができていますね。デジタルの強みを活かして、「みんながどう考えているのか」を即座に知ることで、次の対話へとつなげることができますね。デジタルを用いるよさの一つに「共有」が挙げられることが多いですが、この「共有」の先にどのような学びを設定するのかが重要だと考えています。共有して終わりではなく、共有したことが次の学び(例えば、分類や焦点化等)のきっかけになるような活用法を考えることが、子どもたちの学びをさらに充実させます。

遊免先生の板書エピソードからは、子どもたちと共に授業を楽しむ姿が伝わってきました。「たかが板書、されど板書」です。何事もこだわって突き詰める中に新たな価値が生まれます。
これまでの多くの授業実践で用いられてきた板書も、「ここにデジタルを用いるとすれば……」と捉え直すことで、アナログとデジタル、両方のよさを生かした授業デザインが可能になります。

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