説明文「和の文化を受けつぐ―和菓子をさぐる」教材分析の≪3つの鉄則≫

執筆者: 白石 範孝

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「二部構成」に見える説明文の、具体と抽象をとらえる
今回取り上げるのは、東京書籍 5 年生の説明文教材「和の文化を受けつぐ」です。
一見すると二部構成のように感じる教材文ですが、その中にかくれている基本三部構成や、「具体と 抽象」「まとめ・主張・要旨」などを区別してとらえます。

  • 鉄則1 基本三部構成をとらえる
  • 鉄則2 話題・課題をとらえる
  • 鉄則3 まとめ・主張・要旨をとらえる

※鉄則の概要については「第1回 教材分析の《3つの鉄則》」を参照

説明文教材でも物語教材でも、まずは基本三部構成をとらえることが「鉄則」ですが、文章によっては「三部」ではなく「二部構成」になっているものもあります。
たとえば低学年の説明文教材では、「話題提示」と「事例」の二つの要素のみで構成されているものもあります。こういった文章は無理に「三部」でとらえるのではなく「二部」でとらえます。
一方、「三部」で構成されたものに他の要素が付加されることにより、一見すると「二部」で構成されているように見えるものもあります。
この場合の「二部」とは何なのか、その構成を「読み」や「授業」にどう生かしていくのかを考えます。

基本三部構成とは、説明文の文章全体を、次のような3つの部分に分けてとらえることです。
(詳しくは「第6回 世界にほこる和紙」をご覧ください)

  • 〈はじめ〉…話題・課題
  • 〈なか〉 …具体例・事例
  • 〈おわり〉…まとめ・主張・要旨

説明文も物語も、多くは全体を3つに分けてとらえることができます。
ところがこの「和の文化を受けつぐ」(全17段落)をいくつかの部分に分けようとすると、

  • 前半:①~⑯段落
  • 後半:⑰段落

という2つの部分に分かれるように見えます。
内容を読むと①~⑯段落は「具体」が書かれており、⑰段落は「抽象」が書かれています。
つまり、「和の文化を受けつぐ」は、

  • ①~⑯段落:具体
  • ⑰段落  :抽象

という二部構成の文章であると言えます。

ただし、これで終わりではありません。①~⑯段落をもう一度見てみましょう。
すると、

  • ①段落………〈はじめ〉
  • ②~⑮段落…〈なか〉
  • ⑯段落………〈おわり〉

という、見慣れた基本三部構成が見えてきます。
つまり「和の文化を受けつぐ」は、基本三部構成をつくり「具体」を述べている①~⑯段落に、「抽象」を述べる⑰段落が結びついた形になっていることがわかります。

≪+one point≫ 接続語「このように」で、まとまりをとらえる

⑫段落と⑯段落は共に「このように」という接続語で始まっています。
「このように」は、それ以前に挙げた事例をまとめるときに用います。したがって「このように」は、文のまとまりをとらえる手掛かりとすることができます。
では、⑫段落、⑯段落の「このように」は、それぞれ、どこからどこまでをまとめているのでしょうか?

<⑫段落の「このように」>
⑫段落は2文で構成されています。ポイントとなるのが2文をつないでいる「では」という接続語です。この「では」は、接続語「それでは」と同じ「転換」(前の文や段落の内容から話題を変える)の働きをします。
つまり、⑫段落は③~⑪段落をいったんまとめた後、話題を転換していることがわかります。
 

<⑯段落の「このように」>
⑯段落の「このように」は、A:「⑫~⑮段落のまとめ」なのか、B:「この文章全体のまとめ」なのかで迷います。 そこで、⑫~⑮段落の内容と、⑯段落の内容を見てみましょう。
⑫~⑮の内容は、「和菓子の文化を支えてきた人々についての説明」です。
一方、⑯段落は「伝統的な和の文化を再発見させてくれる」という内容です。
⑫~⑮段落と⑯段落には直接のつながりが見られません。よって、⑯段落は、「この文章全体のまとめ」となります。

「和の文化を受けつぐ」の①段落を見てみましょう。便宜的に一文ずつ改行して書き写してみます。

【①段落】

[文1]わたしたちの生活の中には、古くから受けつがれてきた日本の伝統的な文化がたくさんあります。

[文2]現在わたしたちが食べているようかんやもなか、せんべいのような和菓子もその一つです。

[文3]和菓子とは、ケーキやクッキーなどの菓子とはちがい、日本で伝統的に食べられてきた菓子のことです。

[文4]和菓子は、その歴史の中で、さまざまな文化と関わりながら発展し、現代に受けつがれてきました。

【②段落】

[文5]和菓子は、どのようにしてその形を確立していったのでしょうか。

[文6]まず、和菓子の歴史を見てみましょう。

その文章で、筆者が明確にしようとしていること。

①段落の[文1]~[文4]は、和菓子についての説明で、事実のみを述べています。したがって①段落はこの説明文の「話題」であるとわかります。
一方、②段落の[文5]は「~でしょうか。」と読者に問いかけています。したがってこの文で述べられていることが、この文章の「課題」であることがわかります。
このように「課題」をしっかりとらえることで、観点をしっかりと把握した読みができるようになります。

このように書いてくると、「課題」さえ読み取れればいいように思うかもしれませんが、そうではありません。「話題」をとらえることも大切です。
[文4]を詳しく見てみましょう。
[文4]では、話題の着眼点として「歴史」「文化との関り」「受けつがれてきた」という3つをあげています。
この着眼点を〈なか〉の②~⑮段落にあてはめてみると、次のような構成になっていることがわかります。

  • ②~⑥段落……和菓子の歴史
  • ⑦~⑪段落……和菓子と文化との関わり
  • ⑫~⑮段落……和菓子の受けつがれ方

説明文の「まとめ」は、それまでに挙げてきた事例のまとめです。低学年の説明文では、「まとめ」がなかったり、「まとめ」はあっても、「主張」や「要旨」がなかったりするものもあります。
「主張」は、事例や「まとめ」を踏まえ、筆者の考えを述べたものです。「まとめ」は事実ですが、「主張」は必ずしも事実とは限りません。
「要旨」は、そこまで述べてきた事例から一歩離れ、「まとめ」や「主張」の内容を一般化したものです。「まとめ」「主張」を具体とすれば、「要旨」は抽象となります。
⑯段落では、和菓子の文化が受けつがれてきたことについての「まとめ」と「主張」が述べられています。
一方、⑰段落では、「和菓子に限らず……」と、話題を和の文化一般に広げています。つまり一般化です。したがって⑰段落がこの説明文の要旨となります。

「和の文化を受けつぐ」の「まとめ」「主張」「要旨」は、次のようにまとめることができます。

「まとめ」

長い時を経て、それぞれの時代の文化に育まれ、いく世代もの人々の夢や創意が受けつがれてきた和菓子は、知るほどに奥が深い。

「主張」

和菓子には、おいしさばかりでなく、伝統的な和の文化を再発見させてくれるような魅力がある。

「要旨」

 さまざまな和の文化の歴史、文化との関わり、受けつがれ方を考えていくことは、日本の文化を受けついでいくことになる。

本教材の特徴として次のようことが挙げられます。

  • ①「具体」の部分と「抽象」の部分という2つの部分に分けることができる「二部構成」となっている。ただし、「具体」の部分は〈はじめ〉〈なか〉〈おわり〉の3つの部分からなる基本三部構成でとらえることができる。
  • ②「このように」で始まる段落が二つあるが、それぞれの「このように」がまとめている範囲は異なり、それぞれの段落のはたらきも異なっている。
  • ③「まとめ」「主張」だけでなく、「要旨」が述べられている。

●「題名」の特徴にも注目
この説明文は、「題名」にも特徴があります。
この説明文の題名は「和の文化を受けつぐ」ですが、「和菓子をさぐる」というサブタイトルがつけられています。
説明文の題名には、「話題・課題」を題名にしたものと、「筆者の主張」を題名にしたものがあります。
「和の文化を受けつぐ —和菓子をさぐる― 」は、「『和菓子をさぐる』という具体を通しての、『和の文化を受けつぐ』ことに関する筆者の主張」を題名にしたととらえられます。
本文が二部構成になっているのと同様に、題名にも具体と抽象の二つの要素が含まれているのです。

これらの特徴をもとに、授業の方向を考えていくことができます。

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