「おにごっこ」-<つながり>から学びを深める低学年の説明文授業-

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「おにごっこ」-<つながり>から学びを深める低学年の説明文授業-

単元名:遊びをおもしろくする「ポイント」を伝え合おう 教材:「おにごっこ」(光村図書・2年)
「おにごっこ」の授業づくりを紹介します。
子どもたちにとって親しみ深い遊びを題材にすることで、積極的な言語活動を促すことができる本教材。おもしろさを通して、文章の構造や事例の並べ方を理解し、中、高学年へとつながる「文章を見る目」の素地を育てます。
今回は、沼田拓弥先生(東京都・八王子市立第三小学校)に子どもが前のめりになる授業づくりについてご提案いただきました。

低学年の説明文授業において、大切なことは、文章中の「知識・情報」の整理と共に、整理された情報の中からどこが「大切なポイント」なのかを捉えることである。この点が曖昧になると、単なる文章内容の理解に留まり、他の文章へと転移できる読みの力を獲得する学びにはなりにくい。学習指導要領においても、「文章の中の重要な語や文を考え選び出すこと」が重点指導事項として明確に示されていることは周知の通りである。

では、どうすれば「大切なポイント」を捉えることができるのであろうか。 低学年の説明文教材は、文章の構造もシンプルで、同じような文体の繰り返しの中で事例を紹介しているものが多い。その「文体の繰り返し」(同じ部分)の中にも「変化している言葉の部分」(違う部分)がある。それこそが、その事例の特徴であり、まず捉えなければならない情報である。低学年では、この「文章を見る目」を指導することによって、ある程度までは「知識・情報」を整理できるようになる。

つまり、この「文章を見る目」を低学年のうちにしっかりと育てることが中学年の複雑な事例比較を通した読みの力へとつながっていく。そして、この力は一つの教材の中で育てるものではなく、いくつもの説明文教材を経験する中で、徐々に高めていくものである。 ちなみに、光村図書の令和2年版教科書に掲載されている説明文教材(低学年)を列挙すると以下のようになる。

  • 「くちばし」(1年・6月)
  • 「うみのかくれんぼ」(1年・9月)
  • 「じどう車くらべ」(1年・11月)
  • 「どうぶつの赤ちゃん」(1年・2月)
  • 「たんぽぽのちえ」(2年・5月)
  • 「どうぶつ園のじゅうい」(2年・9月)
  • 「馬のおもちゃの作り方」(2年・11月)
  • 「おにごっこ」(2年・1月)

今回、提案授業として扱う「おにごっこ」は、低学年の説明文教材の終着点である。ここに至るまで、子どもたちは多くの「文章を見る目」を獲得している。以下、主な指導事項を教材の特性に合わせて整理したものである。

  • 事例を比べること(「くちばし」「うみのかくれんぼ」「じどう車くらべ」「どうぶつの赤ちゃん」)
  • 時間の順序(「どうぶつの赤ちゃん」「たんぽぽのちえ」「どうぶつ園のじゅうい」)
  • 事柄の順序(「くちばし」「うみのかくれんぼ」「じどう車くらべ」「どうぶつの赤ちゃん」「どうぶつ園のじゅうい」「馬のおもちゃの作り方」)
  • 問いと答えの関係(「くちばし」「うみのかくれんぼ」「じどう車くらべ」)

紙幅の関係上、それぞれの具体的な指導内容・方法を述べることはできないが、子どもたちは、低学年終了までにこれらの「文章を見る目」を読みの力として獲得することになる。言い換えれば、これはこれまでの学びとの<つながり>を示したものでもある。 また、題材に着目すると、「どうぶつの赤ちゃん」(1年)と「どうぶつ園のじゅうい」(2年)のように、「どうぶつ」という題材の<つながり>を見つけることもできる。

このように、「文章を見る目」という観点で教材を整理することによって、「おにごっこ」においても「前に学習した『うみのかくれんぼ』では、紹介されている生き物を比べて……」というように、「事柄の順序」への接続を意識した授業展開が可能になる。

さらに、低学年では「自分たちの経験と題材の距離が近いこと」も教材へと向かうエネルギーになる。「どうぶつ」「じどう車」「植物」「日常的な遊び」といった具合に、どの題材も子どもたちとの距離が近いものばかりである。そのため、子どもたちの経験知を十分に引き出しながら、筆者が述べている内容と自分の考えを比較することで、新たな読みの解釈を生み出すことができる。

今回、扱った「おにごっこ」では、この「学びの<つながり>」と「経験知から生まれる言葉」を大切にしながら、「大切なポイント」へと迫る説明文の授業を提案する。

本教材は2年生、そして低学年のまとめとなる説明文教材である。この位置付けを踏まえると、これまでの学びを大いに活用しつつ、中学年の説明文教材の学びへとつながる単元としたい。

本文の中で紹介されている「おにごっこ」の遊び方は、筆者が「みんなが楽しめるように」という視点で整理した文章である。事例部分では、「おに側」と「にげる側」の2つの立場からそれぞれのおにごっこのやり方を述べ、その課題と解決策を紹介している。

また、冒頭の1段落には「どんなあそび方があるのでしょう。」「なぜ、そのようなあそび方をするのでしょう。」という2つの問いを示し、その後に続く文章の見通しがもてるようにしている。

子どもたちにとって「おにごっこ」は誰もが一度は経験したことのある身近な遊びであり、イメージしやすい題材である。単元の導入では、子どもたちの経験知を引き出しながら、実感の伴った文章内容の理解へと向かいたい。 
そして、第二次のまとめには、子どもたち全員が経験しているであろう「かくれんぼ」を題材にしながら、説明的文章を創作する授業を行う。「おにごっこ」から「かくれんぼ」へと題材を変えながら、読みの力を高めていく流れである

〔知識及び技能〕

  • 読書に親しみ、いろいろな本があることを知ることができる。(3)エ

〔思考力、判断力、表現力等〕

  • 文章の中の重要な語や文を考えて選び出すことができる。C(1)ウ
  • 文章を読んで感じたことやわかったことを共有することができる。C(1)カ

〔学び向かう力、人間性等〕

  • 文章を読んで感じたことやわかったことを進んで共有し、学習の見通しをもって、本を読んでわかったことを説明しようとしている。

一次
文章の大体を読む。(第1〜3時)
  • 子どもたちの経験知を引き出しながら、文章の大まかな構造と内容を理解する。

二次
これまでの学びとの<つながり>を意識しながら、重要な語や文に着目して読む。(第4~7時)
  • それぞれの事例のおもしろさを読む。
  • 2つの立場を整理しながら、それぞれの事例の課題と解決策を読む。
  • 新たに「かくれんぼ」を題材として扱い、「おにごっこ」と比較しながら、文章内容を創作する。

三次
自分の選んだ題材で簡単な説明文を書く。(第8~12時)
  • 学校図書館等を活用し、自分の調べた遊びについて、これまでの学びを生かした簡単な説明文を創作する。

ここでは、第4時と第7時の授業の様子を紹介する。 
ちなみに、第4時では「紹介されているおにごっこの事例の比較を通して、それぞれのおもしろさを明らかにすること」、第7時では「『かくれんぼ』を題材にした説明文の創作を通して、これまでの学びを整理すること」をねらいとした。

要旨をまとめる学習を通して、自分たちが和の文化大使として何を伝えたいのかを考える思考活動を同時に行う。相手に理解してもらうために、筆者はどのような工夫をしているのかを書き手の立場から検討することで、自分たちの構成と主張を見直すことができる。

3-2-1.第4時「事例の比較を通して、それぞれのおもしろさを明らかにする」

第4時の板書

この授業では、紹介されている4種類の「おにごっこの工夫」を整理することをねらっている。

導入では、第一次で整理した「文章の構造と内容」の理解をベースとしながら、板書で情報を整理し、学習課題「これらのおにごっこの中で、一番工夫されているのはどれか?」を提示する。
文章の中には、各々の「おにごっこ」の工夫が述べられている。その工夫とは、より「みんなが楽しく遊べる」ためのものである。この工夫の議論によって、「楽しさ・おもしろさ」が引き出されると考えた。

この学習課題に沿って、子どもたちは各々、一つを選択し議論する。この課題には、明確な答えは存在しないが、各々の解釈を通して「一番工夫されている遊び」を議論する中で、それぞれの「おにごっこのおもしろさ」への理解を深めていくのである。

授業終盤には、「これらのおにごっこを紹介する順番は、入れ替えてもよいですか?」と追加の発問を行い、これまでに学習してきた「事柄の順序」について検討した。

3-2-2.第7時「『かくれんぼ』を題材に、これまでの学びを生かした簡単な説明文を創作する」

第7時の板書

第二次の最後には、これまでの学習のまとめとして、<つながり>を意識した表現活動を設定する。「おにごっこ」同様、多くの子どもたちが一度は経験したことがあるであろう「かくれんぼ」を題材に簡単な説明文の創作を行った。「かくれんぼ」は1年生のときに学習した「うみのかくれんぼ」でも扱った題材である。この<つながり>についても一度扱いたい。

まず、導入では、これまでの「おにごっこ」の学びを整理する。板書上段に「おにごっこ」を通して学習してきた「大切なポイント」を可視化した。今回、可視化したのは、「問いの文」「二つの立場」「おにごっこのネーミング」「筆者のまとめ」である。このように、板書上段にこれまでの学びをシンプルな言葉で整理することで、この部分を頼りにしながら自分の考えを語る子どもの姿を見ることができる。これまでの学びとの<つながり>を意識して表現できるようにするための工夫の一つである。

次に、上記の情報が整理できたタイミングで「かくれんぼ」に関する経験知を「かくれんぼってどんな遊び?」や「どんなところがおもしろいの?」と問いかけ、引き出した。実際に遊んだことがあるからこそ、具体的なイメージを共有しやすく、遊びのおもしろさとその際の悩み(課題)についても共感を得やすい部分である。このように、低学年では、話し言葉を中心に、思考を耕しつつ言葉を生み出していくことをおすすめする。

思考を耕したあと、板書上段の「おにごっこ」の基本構造に照らし合わせながら、「かくれんぼ」の説明文の内容を検討した。「導入の文章(話題提示)」「問いの文」「具体的な遊び方」「隠れる側・見つける側から見た遊び方」「まとめの文章」という具合に、これまでに学んだ説明文の授業の基本となる要素に照らしながら創作を行った。ここでの創作活動は、完全な文章の完成を目指すのではなく、文章創作の流れを捉えることが大事である。

第三次では、この「かくれんぼ」の授業を生かしながら、自分の興味のある遊びを調べ、そのおもしろさを伝え合う簡単な説明文を創作する表現活動を行うことで、さらなる学びの<つながり>を生み出した。

低学年における説明文の授業は、中学年・高学年の学びを支える「大切なポイント」が数多く凝縮されている。シンプルな文章だからこそ、子どもたちが「文章を見る目」を獲得することができ、その上で、それらを活用した学びへと誘うことができる。中学年の学びへとつながる説明文学習の素地となる読みの力を意識した授業を今後も考えていきたい。

沼田 拓弥(ぬまた・たくや)

東京都・八王子市立第三小学校(主任教諭)

全国国語授業研究会理事/東京・国語教育探究の会事務局長/「立体型板書」研究会主宰/日本授業UD学会会員/全国大学国語教育学会会員

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