第10回 生徒指導提要を現場の目線で読む

今回紹介するのは、生徒指導提要の第10章「不登校」です。執筆を担当させていただく松本さおりです。北海道の公立小学校に勤務しています。私が教員として働き始めてから8年が経とうとしています。初任校での勤務を終え、2校目へ赴任しました。2校目の勤務が始まる年齢ともなると、中堅教員の一歩手前。さらに生徒指導への知見を深めたいと思っていたところ、縁あって藤原友和先生からお声がけいただき、このような機会をいただきました。

漫画制作:ヤッシー(@84yame1000

第10章について

第10章「不登校」は、

10.1 不登校に関する関連法規・基本指針
10.2 教育機会確保法
10.3 不登校児童生徒への支援の方向性
10.4 支援の目標

という4つの節から成っています。

子どもたちにとって、学校が居心地のよい場所であることが望ましいですが、様々な理由で学校に登校できない児童生徒がいるのも事実です。私はいち教員でしかありませんが、正解が出なくても寄り添い、考え続けることに意味があると信じています。そんないち教員の視点から、「不登校」の章を読み解きました。みなさんも、ぜひ一緒に考えてくださると幸いです。

不登校の児童生徒を「社会的自立」へ導く体制づくりとは

まず、「不登校」の章で根底にある考え方は、「社会的自立」です。今回改訂された生徒指導提要では、

不登校児童生徒への支援の目標は、将来、児童生徒が精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるような、社会的自立を果たすことです。

(「生徒指導提要」p.224)

と記載されています。また、「社会的自立」とは、適切に他者に依存したり、自らが必要な支援を求めたりしながら、社会の中で自己実現していくということであり、

児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支える

(「生徒指導提要」p.13)

という生徒指導の目的そのものと重なる部分があります。児童生徒が、自らの意志と判断で主体的に社会に参画していけるよう、支えていくことが読み取れます。

学校では、不登校の児童生徒が、再び登校することをゴールにしてしまいがちですが、再び学校に登校することがどの子にとっても最適解というわけではありません。「社会的自立」を念頭におき、一人一人が望む自立の姿に近づく手助けができるように、「チーム学校」として支えていく体制を整えていくことが重要であると思いました。

また、不登校の児童生徒を支援する際に基本となる考えは、平成28年に制定された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」に基づきます。不登校の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために、多様な教育の機会を確保することがこの法律の大きな柱です。教育支援センター、フリースクールなど、学校に登校するだけではない選択肢があることにより、児童生徒個々の状況に応じた学びの形を実現することも、学校に求められていることの一つです。そのために、担任、養護教諭、コーディネーター、スクールカウンセラーなどの様々な立場の職員が連携し、情報を共有する、という点にも留意していかなければなりません。

関係機関との連携を図る際に欠かせないのが、説明と納得の過程(インフォームド・コンセント)です。なぜこの機関が児童生徒にとって必要なのかを、本人、保護者に丁寧に説明し、支援の内容への合意を得た上で連携していくことが大切です。

不登校を未然に防止するための魅力ある学校・学級づくり

さらに、不登校の発達支持的生徒指導の段階で、「魅力ある学校・学級づくり」が求められているということも、見逃せないポイントとなると考えます。

はじめに学校・学級ありき。どの子にとっても居心地がよく、安心して過ごせる居場所づくりをしていきましょう、と今回改訂された生徒指導提要に示されているのです。これは現場にとって、大きな意味のあることです。担任をもっている先生なら、学級経営に普段から力を入れていることでしょう。どの先生方も、児童生徒のことを考えてかかわったり、授業づくりをしたりするでしょう。普段から行っている、当たり前ともとらえられる日々の営みが、不登校を未然に防止することに繋がっているのです。

図1 不登校の発達支持的生徒指導について
(「生徒指導提要」pp.229-230をもとに筆者が作成)

「私の現場」で生かすとしたら

上で述べたポイントをもとに、「私の現場」で取り組むとするならば、次の2点が大切だと考えます。

①安心できる学級経営は安心できる職員室から
②「社会的自立」のための道を考える

それぞれ、以下で詳しく説明します。

安心できる学級経営は安心できる職員室から

全ての児童生徒にとって、学級、とりわけ所属する学級・ホームルームが安全・安心な居場所となるような取組を行うことが重要です。

(「生徒指導提要」p.229)

このように述べられているように、生徒指導において、学級が安心できる居場所になるような集団づくりを目指していくことが求められています。

学級経営は、先生と児童生徒の毎日の小さなかかわりの積み重ねです。私自身も、児童が安心して楽しく過ごせる学級を目指して、日々の業務に勤しんでいます。目の前の子どもの幸せのために、担任である自分にできることを考え、実践することで、居場所となる学級に少しずつ近づいていくのだと思います。

それでも、うまくいかないときもあります。悩んでいるときは、周りの先生に相談して、悩みの種を減らしておけば、子どもの前に笑顔で立つことができるのではないでしょうか。
学級の中の子どもを、学級経営や授業で幸せにする。たとえうまくいかなかったとしても、先生自身が職員室で助けてもらえる。私自身も、学校を運営するスタッフの一人として、教室でも職員室でも、居心地よく安心して過ごせる空間をつくれるように行動していきたいです。

私の勤務校の職員室には、リーダーシップがあり、導いてくださる管理職の先生、いつでも悩みを聞いてくださり、適切なアドバイスをくださる学年主任の先生、様々な場面で支えてくださる同僚の先生方がいらっしゃり、毎日楽しく働くことができています。先生も子どもも、支えられている実感があるからこそ、安心して過ごせるのだと思います。

「社会的自立」のための道を考える

不登校の児童生徒は、「社会的自立」に至るための様々な学びの場を選択できます。学校は、不登校の児童生徒とその保護者の意向をしっかり聞き取り、適切な学びの場につないだり、今後の支援の方向性を考えたりしていきます。そのときに、様々な職員が連携し、よりよい方向性を探っていくことが大切です。

教育相談のはじめの窓口は担任の場合が多いと思います。児童生徒の学校生活全体を俯瞰して、どこに辛さを抱えているかを、一番近くで理解することができるのは担任です。また、フリースクールや、教育支援センターとの連携を図る生徒指導担当の教員や、特別支援コーディネーターは、不登校の児童生徒にとって望ましい学びの場との橋渡しをする存在です。児童生徒や保護者の辛さに寄り添うことができるのがスクールカウンセラーです。「チーム学校」として、それぞれの職員の強みを生かし、連携していくことで、個に応じた「社会的自立」の形を探っていけると考えます。

生徒指導提要第10章を読み終えて

改訂された生徒指導提要では、すべての章を通じて「連携」の大切さが述べられています。それほど、生徒指導の課題は多岐にわたるので、担任や一部の教員だけが抱え込むものではなく、たくさんの人の手を借りて、みんなで子どもを見守っていこう、そんなメッセージを感じました。

この章の「不登校」でも、学校職員や様々な学びの場が連携して支援にあたること、不登校の児童生徒や保護者を支える際のあり方が記されていました。あなたは一人じゃない、手を取り合って助け合おう。そんなメッセージを絶えず送っていれば、自ずと居心地のよい学級づくりや、適切な支援にも繋がっていくと感じます。

これからも、子どもが安心して楽しく過ごせる学級経営、わかりやすい授業づくりに取り組むことは変わりありません。子どもの幸せのためには、学び続けること。この章を読んで、改めて実感しました。

最後に、執筆の機会を下さった藤原友和先生、東洋館出版社様、そして私をいつも支えてくださる勤務校の先生方、本当にありがとうございました。

まさやん@グラレコ喫茶のマスター(@succhang55

次回3/17(金)公開では、山崎克洋先生の第11章「インターネット・携帯電話に関する問題」についてお伝えします。お楽しみに!

コメント

  • 読ませていただきました。 共感できることが、たくさんありました。現場の先生方の苦労、工夫がよくわかりました。ありがとうございます!

    大根

    大根田博

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