安心できる学級を目指して! 今年度の自分を振り返る5冊

執筆者: 樋口亜紀

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樋口 亜紀(ひぐち・あき)

三重県四日市市立河原田小学校教諭。

1988年生まれ。名古屋女子大学卒業後、現職。幼稚園免許、保育士資格を保有。知的障害の兄の影響で幼い頃より「障害児教育」に興味をもち、今日まで学び続けている。現在は日本授業UD学会、日本LD学会所属。「特別支援教育」「発達心理学」を中心に学び、子ども理解について啓発を行っている。特別支援Co.や市内の特別支援教育研究協議会会長などを務めた。

いよいよ今年度も終盤になりました。次年度へ意識が向いていく時期ですね。1年間を振り返るときっと様々な出来事があったと思います。楽しいこと、しんどいことなど思い返せば切りがないほど私もたくさん出てきます。だからこそ「自分の在り方は子どもたちにとってどうだったかな? 安心できる人であったかな? 安心できる環境を整えられていたかな?」ともう1度立ち止まって振り返るには、丁度いい時期なのではないかと思います。
3月に入れば、きっと次年度に向けて落ち着かない慌ただしい時期に入ってきます。その前に、この1年の自分の在り方について振り返り、次年度に向けてマインドを整えていくための一助となれば幸いです。

私自身、この教員生活を振り返ると、小さな失敗から大きな失敗まで様々な「失敗」をしてきました。目を背けたい気持ちになったり、相手のせいにしてしまいそうになったりしながらも、失敗から学ぼうとしてきたつもりです。例えば、「○○しなかった」→「△△になった」→「今度から○○するようにしよう」という具合に考えてきました。
しかし本書では、「なぜ○○しなかったのか」という失敗に至るまでの過程を自分で振り返ることができるように構成されおり、失敗を深掘りしていくことができます。失敗を深掘りしていくことで、だんだんと自分の行動や思考の癖が視覚化され、どんなところで失敗しやすいかが分かってくるのです!そこが分かれば、自分が失敗しやすいところを意識しながら行動することができるので、小さなミスから防ぐことができるし、何より相手のせいにしなくて済みます。今までの自分の失敗への見方がいかに短絡的であったかということを感じました。
また理論だけでは、なかなかイメージがつきにくいところも失敗事例が載せられているので、その事例を使って、自分ならどのように考え、行動をとるかなど失敗の分析の見通しや練習もすることができます。何よりその失敗事例は、第一線で活躍されている先生方の実際の失敗事例!すごい先生方も同じように失敗してきたのだなとホッと心を緩めながら読み進めることができます。
自分を見つめ直す機会にもでき、よりよい自分へと導いてくれる失敗を「味方」につけていきましょう!

「個別最適な学び」と「協働的な学び」。教員をしている方なら、必ず耳にしたことがあると思います。しかし、言葉は知っているけれど、説明しようとすると曖昧だという先生方も多いのではないでしょうか。
本書では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」について、特別支援教育の考え方を交えながら改めてどのようなものかを的確に示してくれています。特に、小貫先生の「個別最適な学び」は「合理的配慮」の特殊形態とも考えられるのではないかという意見が私にはとてもしっくりきました。なぜなら、特別支援教育では、その子なりの適切な学び方があることを理解し、その学びができるように環境調整を行うからです。それをクラス全体の子どもたちへと広げた形が「個別最適な学び」だとイメージすることができました。
また、筑波大学附属小学校の桂先生と高倉先生の「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体化した授業についても載せられているので、授業のどこで「個別最適な学び」と「協働的な学び」を仕組んでいるのかが分かり、自分が実際に授業を組み立てるときの見通しを持つことができました。
最後に根幹とも言っても良い学級経営について、名だたる先生方の学級経営においての信念に触れることができます。特に今回の特集は、クラスが不安定になってしまった、またはなりそう!という時の対応や考え方などが書かれています。このような内容を取り上げた本には出会ったことがないので、貴重な内容だと感じました。うんうんと、勉強になることばかりです!
授業が成立するためにも、安心・安全な教室にしていくことです。この1冊で、学級の土台づくりと授業づくりをぜひ学んでください!

現在、20万人を超える子どもたちが不登校という選択をしている状況があります。不登校の理由は様々なので一概には言えませんが、「学校」という場所が耐えられないと感じている子どもたちが多くいることは事実です。このような現代の子どもたちの状況に私たちは向き合っていかなくてはなりません。
本書では、「登校ハードルの低いクラス」を理想に掲げ、できるだけ子どもたちが通いやすいクラスにするための実践を積み重ねている著者のめがね旦那先生の3日間に触れることができます。朝の会から始まり、授業のこと、休み時間のこと、清掃指導のことから放課後の働き方まで、めがね旦那先生が日々どのように子どもたちに向き合いながら授業を行い、どのように働いているのかを知ることができます。
「誰1人置いていかないようにする」「教師としての専門性を磨く」「子どもたちが置かれている現状を把握し、寄り添う」ことなど子どもファーストを常に意識されながら、実践されていることが伝わってくる学び多き1冊です。その思いは、居心地が「いい」ではなく、「悪くない」という書名にも表れていると感じました。
自分の実践と比較しながら、「なぜ自分は今の実践を行っているのか」と考えながら読むと、より考えを深められるのではないかと思います。

「あなたは、本当の意味で学級を経営していますか? 学級経営とは、何をすることですか?」という問題提起から本書はスタートします。
もちろん、私も子どもたちが笑顔で過ごせる、つながり合えるクラスづくりを目指していつも学級経営を行っているつもりです。しかし、本当の意味での経営とは? 何をすること? そう問われるとはっきりと答えられない自分にドキッとしました。思い返せば、学級経営の仕方をどこで培ってきたのかと考えると、先輩の指導の仕方やアドバイス、自分の経験からになります。そう考えると、これまで理論をあまり知らない中で学級経営を行っていたことになります。しかし、私のように「知らなかった!」という先生方のが意外と多いかもしれません。
そんな先生方に、本書はとてもピッタリです。最初に、今の現代に求められている「つながり」を育む学級経営について図やイラストなどを用いて丁寧に解説されています。また、つながるための10のしかけとともに、1年間の道筋をどのように考えていくのかも詳細に書かれています。まさに、学級経営の教科書ともいうべき1冊になっています。
上條先生がおっしゃるように今はSNS上にさまざまな「方法論」が発信されています。しかし、手っ取り早く行える方法論だけの取り組みには、目の前にいる子どもたちはいません。真の学級経営には、「確かな児童理解」と「ゴールの設定」が必要です。そのためにも、学級経営の理論を知っておくことはとても重要なことだと感じました。 この1冊を通して、学級経営のイロハを知り、実践へとつなげていきましょう!

さて、私たち教師は4月から約200日の間、受け持ったクラスの子どもたちと1日約7時間を共に過ごします。それが9年間続くことを考えると、多くの時間を子どもたちと過ごしていることが分かると同時に、教師の言動が子どもたちに影響を与えるには十分な時間があることも分かります。
 本書は、そんな影響力を持つ教師が行なっている指導について、「その指導は果たして本当に子どもたちのためになっているのだろうか?」と立ち止まって考える必要があるという川上先生の思いがひしひしと伝わってきます。
読み進めると、不適切な関わりとされる「教室マルトリートメント」に該当してしまう指導を自分もしてしまっていることに気づかされました。そのような気持ちを持っていないくても、知らず知らずのうちに子どもたちの心を傷つけていたことを知った時は、胸が痛くなり目を背けたい気持ちにもなりました。しかし、それ以上に子どもたちに負の影響を与えていたかもしれないと思うと、やはり「教室マルトリートメント」のような関わりを選ばないようにしたいと心から感じました。
「教室マルトリートメント」は、子どもにとっても教師にとっても笑顔でいられるための重要な視点です。不適切な関わりを選ばない心の持ち方ができるように、みなさんも、今一度自分の指導の仕方を振り返り、子どもたちが安心できる教師を一緒に目指していきましょう!