「要点」「要約」をとらえる練習に
今回取り上げるのは、3年生で学習する説明文「すがたをかえる大豆」(光村図書3年下)です。
「要点」をまとめたり「要約文」を書いたりできる力を育てていきましょう。
【説明文の教材分析の《3つの鉄則》】
- 鉄則1 基本三部構成をとらえる
- 鉄則2 話題・課題をとらえる
- 鉄則3 まとめ・主張・要旨をとらえる
※鉄則の概要については「第1回 教材分析の《3つの鉄則》」を参照
「定番教材」といってもいいくらい、説明文の教材としてはよく知られている「すがたをかえる大豆」。この教材は、形式段落ごとに書かれていることがとらえやすいため、「要点」をまとめる活動の練習に最適です。
また、その「要点」から基本三部構成をとらえたり、「要約文」を書いたりといった活動にも展開していくことができます。
鉄則1 基本三部構成をとらえる
段落ごとの要点をまとめることによって、「基本三部構成」をとらえる。
基本三部構成とは、〈はじめ〉話題・課題の部分 ~〈なか〉事例・具体例の部分 ~〈おわり〉まとめ・主張・要旨の部分です。基本三部構成をとらえると、文章全体を俯瞰する読みができるようになります。
今回は、基本三部構成をとらえるために、各形式段落に何が書かれているのか、「段落の要点」をまとめてみましょう。
「要点をまとめる」とは、形式段落を短くまとめることです。
具体的には、次のように行います。
- ① 形式段落の中の文の数を数える。
- ② その文の中から、「まとめをしている」「最も大切な」一文を取り出す。
- ③ 取り出した一文の主語を文末にしてまとめる(体言止めにする)。
「すがたをかえる大豆」の段落の要点は、次のようになります。
- ①段落…いろいろな食品にすがたを変えていることが多いので気づかれない大豆。
- ②段落…昔からいろいろ手をくわえておいしく食べるくふうをしてきた大豆。
- ③段落…大豆をその形のままいったり、にたりして、おいしくするくふう。
- ④段落…こなにひいて食べるくふう。
- ⑤段落…大豆にふくまれている大切なえいようだけを取り出してちがう食品にするくふう。
- ⑥段落…目に見えない小さな生物の力をかりて、ちがう食品にするくふう。
- ⑦段落…取り入れる時期や育て方のくふう。
- ⑧段落…大豆のよいところに気づき、食事に取り入れてきたおどろかされる昔の人々のちえ。
ここで、段落の主語を見てみます。 「段落の主語」とは、段落の要点を体言止めの形でまとめたときの体言にあたる言葉です。その段落が、「何について書かれているか」を端的に表したものといえます。 「すがたをかえる大豆」の各段落の段落の主語は、次のようになります。
- ①段落…大豆
- ②段落…大豆
- ③段落…くふう
- ④段落…くふう
- ⑤段落…くふう
- ⑥段落…くふう
- ⑦段落…くふう
- ⑧段落…むかしの人々のちえ
このように、「①、②段落」「③~⑦段落」「⑧段落」と、きれいに3つにわけることができました。 これがそのまま、この説明文の基本三部構成だととらえてよいでしょう。
「すがたをかえる大豆」の基本三部構成
〈はじめ〉話題・課題の部分…①、②段落
〈なか〉 事例・具体例の部分…③~⑦段落
〈おわり〉まとめ・主張・要旨の部分…⑧段落
基本三部構成をとらえる方法はいくつかありますが、今回のように、まず段落の要点をまとめ、段落の主語をとらえることによって、文章全体を3つにわけることもできるのです。 なお、主語が同じ段落のつながりを「主語連鎖」といい、主語連鎖を見ることによって「意味段落」をとらえることができます。
鉄則2 話題・課題をとらえる
表記の使いわけに着目することで、話題・課題の中心をとらえる。
説明文の「話題・課題」は、設定の部分からとらえることができます。 「すがたをかえる大豆」では、①、②段落が設定ですが、特に②段落は、次のような特徴的な記述になっています。
「大豆は、ダイズという植物のたねです。えだについたさやの中に、二つか三つのたねが入っています。ダイズが十分に育つと、さやの中のたねはかたくなります。これが、わたしたちが知っている大豆です。かたい大豆は、そのままでは食べにくく、消化もよくありません。そのため、昔からいろいろ手をくわえて、おいしく食べるくふうをしてきました。」
この段落では、この文章に出てくる「大豆」「ダイズ」「たね」という言葉について説明しています。
- ダイズ…植物の名前
- たね…植物のたねのこと。
- 大豆…ダイズのたねのこと。ダイズのさやのなかにでき、ダイズが十分に育つとかたくなる。
これらをきちんと区別しておくことによって、「何がすがたを変えているのか」を読み取り、おいしく食べる工夫をしているのは「大豆」であることを確認します。
図にして提示することも効果的です。
なお、このことに関連して、題名が「すがたをかえるダイズ」ではなく、「すがたをかえる大豆」となっていることにも気づかせたいものです。
《+OnePoint》 表記
文章では、同じ言葉をカタカナとひらがなに使い分けたり、漢字を用いたりすることがあります。
わざわざ使い分けているのは、そこに何らかの筆者の意図があると考えられます。
同じ言葉に複数の表記法が用いられている場合、その理由に着目することで書かれていることが読み取りやすくなったり、筆者の考えの理解につながったりします。
「すがたをかえる大豆」では、⑦段落を次のように活用することでこの文章をどれだけ読むことができているのかをとらえ、評価に結びつけることができます。
これらの他に、とり入れる時期や育て方をくふうした食べ方もあります。( ) を、まだわかくてやわらかいうちにとり入れ、さやごとゆでて食べるのが、えだ豆です。また、( ) の ( )を、日光に当てずに水だけをやって育てると、もやしができます。
文中の ( ) の中に「大豆」「ダイズ」「たね」の言葉を記入させて、段落内容を完成させることで、「話題を認識できているか?」「筆者の主張を読み取れているか?」といった評価を行うことができます。
鉄則3 まとめ・主張・要旨をとらえる
要約文を基本形でまとめ、筆者の主張とする
「すがたをかえる大豆」は、中学年向けの説明文であり、とらえるべき「要旨」はありません。「筆者の主張」をとらえます。
「すがたをかえる大豆」は非常にシンプルな構造なので、文章全体をまとめた「要約」を「筆者の主張」ととらえてよいでしょう。
「要約」とは、文章全体をまとめることです。
前述の「要点をまとめる」と「要約する」の違いを、しっかり認識しておいてください。
「要点」は形式段落ごと、「要約」は文章全体です。 また、「要約」については字数制限が設定されることがあります。
では、「要約」の具体的な方法です。
要約文は、次のような基本形に当てはめると書きやすくなります。
筆者は、( 事例・具体例の部分 ) を通して、( まとめ・主張・要旨の部分 ) ということを説明・主張している。
この基本形にあてはめると、「すがたをかえる大豆」の要約文は、次のようにまとめることができます。
●要約文の形式でまとめた筆者の主張
筆者は、大豆がいろいろなものにすがたを変えていることを例として、これらのくふうは昔の人々のちえであることにおどろかされるということを説明している。(73字)
上記の要約文は73字でしたが、200~300字程度でまとめるには、「事例・具体例の部分」を膨らませて具体的に説明するとよいでしょう。
この説明文の場合は、「そのままの形からの大豆の変身」「大豆を違う食品にする変身」「取り入れや育て方を工夫した変身」などがそれにあたります。
●要約文をふくらませた筆者の主張
筆者は、大豆をその形のままいったりにたりしておいしく食べるよう変身させたり、粉にひいたり、大切なえいようだけ取り出したり、目に見えない小さな生物の力をかりたりして形を変えて違う食品に変身させたり、取り入れや育て方をくふうして変身させたりして、いろいろなものにすがたを変えていることを例として、これらのくふうは昔の人々のちえであることにおどろかされるということを説明している。(186文字)
なお、授業で「筆者の主張」をとらえる場合、「この文字数におさめなければならない」といったものが最初からあるわけではありません。要約文の形式に合わせて、まずは、200字くらいでまとめてみるとよいでしょう。
今月号のまとめ
「すがたをかえる大豆」には、教材として次のような特徴がありました。
- ①「要点」をまとめやすい形式段落である。(「要点」の指導に適している)
- ②「要約」しやすい文章構成である。(「要約」の指導に適している)
- ③話題に関係のある題材の表記の違いがある。
①「要点」の指導について
「すがたをかえる大豆」は形式段落ごとの内容がとらえやすい教材です。
したがって、「要点」をまとめる方法を指導するのに適しているといえます。
さらにそれに関連し、段落の主語や、主語連鎖などをとらえ、それをもとにして基本三部構成や意味段落をとらえる活動にもつなげやすい教材です。
②「要約」の指導について
段落ごとの要点や基本三部構成も捉えやすい構造になっていることから、文章全体の「要約」も容易に行うことができます。
要約文をまとめる練習や、「要点」と「要約」の違いを子どもたちに認識させやすい教材です。
③「表記」の違いについて
題名にある題材としての「大豆」という言葉を、「大豆」「ダイズ」そして、これを言い換えた「たね」という言葉で表現しています。
②段落でそれぞれの意味を明確にしており、そこをしっかりとらえることができるかどうかが、文章全体の「要約」を適切に行えるかどうかに関わってきます。 叙述をしっかりとらえることの練習や、それができているかどうかの評価にも結びつけやすい教材です。