夢中がつくる学び
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商品説明
夢中×失敗の価値づけ×トライアルアンドエラーで、
子どもがもっと深く、たのしく学ぶ授業づくり!
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「夢中」には、すばらしい力があります。
大好きな趣味について勉強したり、調べごとをしたり……
そんな日々の「夢中」のなかでは、
無意識のうちにトライアルアンドエラーが繰り返され、
多くのことを身に付けることができます。
しかし一方で、この「夢中」を阻む存在——「失敗」が、
その大きな障壁となることもあります。
本書では、子どもたちの「夢中」の学びを教室で実現するために、
以下を取り入れた授業づくりの考え方、手立てを提案し、
実際の授業での子どもの姿を紹介しています。
・子どもの「失敗」を受け止め、価値づける
・夢中になる課題設定や手立て
・トライアルアンドエラーを繰り返すことができる
環境を日々の授業で醸成する
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・子どもたちはしっかり話を聴いているけど、何か教師に
やらされているような授業になってしまう
・授業中にすぐに「できた」と言って、考えることを
あきらめる子が多い
・学校で子どもたちに教えたことが、社会に出てから本当に
役に立つのか疑問に思う
もし、こんなお悩みをもっている先生がいらっしゃいましたら、
本書がその一助になれることを願っています。
おわりに
理想の授業って何だろう?
(中略)私はかつて、「落ち着いた規律ある雰囲気の授業」にあこがれて、ひたすら授業のきまりや話の聴き方、発表の仕方などのルールを徹底して「指導」していた時期がありました。子どもたちの学習のために授業ルールがあること自体はとても大切なことなのですが当時の私はこの雰囲気づくり「だけ」で満足していた部分がありました。つまり、授業の内容はどうあれ、子どもたちがきまりを守って発言や話し合いをしてさえいれば、それで成功だと考えていたのです。
子どもたちに静かに話を聞かせ、時間通り、計画通りに授業を進めることだけを重視し、「自分の準備した答えを子どもが発表できたらよい授業」などと考えていたことも正直ありました。しかし今思い返すと、そこに、子どもたちが自分ごととして夢中になって考えたり、自由に活動したりする「隙」は、全くなかったのだと思います。
横浜国立大学附属鎌倉小に赴任した年の5月、職場の先生方に私の「そんな規律ある雰囲気」の授業を見てもらいました。授業中、子どもたちは静かに友だちの方を向いて話を聞き、自分の考えに理由をつけて発表していました。話合いは途切れることはなく、発表の仕方や、次の友だちへの指名の仕方もきめられたルール通りにしっかりとできています。
授業の終末では、私が指導案でねらいとしていたことを、子どものたち自身の言葉でまとめて終えることができました。この時私は、「自分の思った通りの授業ができたのでは」と満足していました。でも、今思えば、それだけだったのです。その授業後の研究協議で、ある一人の先生から言われた言葉が自分の授業観を考え直すきっかけになりました。
「あの授業って結局子どもがただ先生のために、頑張って発表しているだけだよね。それって全然子どもらしくないよね」(もちろんアドバイスとして、今でもありがたい言葉だと思っています。)
つまり私が今までやっていた授業は、「ただ私が言ってほしいことを子どもたちに言わせるためだけの授業」だったのです。
そこから、自分のなかで今まで納得してやってきた授業に対して、大きな不安が生まれました。
『子どもらしさ』って何だろう?
『自由』と『自分勝手』って何が違うんだろう?
『教師に言わされていない本当の言葉』って何だろう?
その答えを知りたくて、その次の日からひたすら本を読んで勉強したり、いろいろな学校の研究会の授業を見に行ったりしました。勉強すればする程さらにわからなくなったり、わかったかと思ったら正反対の考えに出会ったり……「自分のやりたい授業って何だろう?」という疑問だけが大きくなっていきました。
今、冷静に振り返ってみると、当時の自分もトライアルアンドエラーをしていたのだと思います。その答えを知りたくて、常にもがいていました。
もがいた先で、一つのヒントとなったのが、研修先で学んだ「幼児教育」そして「子どもの夢中」でした。
ひたすら一つのことに夢中になって、目をキラキラさせて取り組む幼稚園児の姿を見た時、自分が目指したい授業イメージと重なりました。
「こんな『夢中な瞬間』を自分の授業にも取り入れていきたい!」
そんな思いで、またいろいろな学校の授業を見に行きました。全国のさまざまな先生の魅力的な実践、そして目を輝かせながら夢中で授業に取り組む子どもたちの姿を見て、自分のなかにあった価値観が大きく変わっていきました。
答えを知りたくて、必死で集めていた「バラバラの知識」が少しずつまとまり、「自分の目指したい授業」が明確になっていきました。
「子どもの方が大人より深く考えている」
「子どもたちに教わりながら一緒に授業をつくった方が面白い」
「試行錯誤を繰り返しながら夢中になれることにこそ学びの本質がある」
これが今の私の中心にある授業の考え方です。
教師の枠にはまらない。大人が「当たり前」だとスルーしてしまうことも、「なんで?」と思わず言ってしまう。「子どもらしさ」なのだと思います。そう思えるようになったら、子どもの突拍子もない発言に対しても自然なことなんだ」と受け止められるようになっていきました。「子どもの考えにのっかり、その力を最大限に引き出す」という現在の授業スタイルにしてから、子どもも私も心から「楽しい」と思える授業が少しずつできるようになりました。もちろん授業中に私の意図しない展開になることもありますが、それ自体に価値や意味を見つけて楽しめるようになりました。
今まで自分がやっていた「教師の思っていることを子どもに言わせる授業」の何倍も意味のある授業になってきたなと自分自身が思えるようになりました。この仕事を始めてから、一周も二周も周り道をして、「授業の主役は子ども」という言葉の意味がようやく最近、自分のなかにストンと落ちてきたように感じます。
静かで落ち着いている授業も素晴らしい。しかし、にぎやかな授業にもいろんなよさがある。これからも、どちらの授業のよさも追究していける教師でいたいと思います。
(本書「おわりに」より抜粋)