使える学力の育て方 すべての生徒が自学自走できる授業づくり
レビューを書くと100ポイントプレゼント
商品説明
国語科の実践を例に挙げながら、生徒の「学力」が着実に向上する
中学校の授業改善の具体策!
「使える学力」とは何か
物事を「知っている」ということと、知っていることを「使える」ということは、それぞれ明確に分けて考える必要があります。中教審の論点整理(平成27年)でも、「身に付けるべき知識に関しても、個別の事実に関する知識と、社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関する知識とに構造化される」と指摘し、新しい学習指導要領は「何を学ぶか」「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」を重視しています。
これらのことを踏まえて、私なりの解釈を述べさせてもらえば、「知っていることを使えてこその学びだ」ということです。また、知っていること同士をくっつけて新しい知識を得ていくことも抱き合わせで必要だと思います。
実を言うと、受験学力も同じです。あまり意識されていないかもしれませんが、単純な暗記だけでは、入試を乗り切ることはできません。
本書に登場する学力の具体は、いくつかの能力の掛け合わせによって高められていくものです。例を挙げると、「学習内容を解釈する力」「学習のゴールを見通す力」「概念を砕ける力」「プレゼンする力」(効果的なアウトプットで相手を納得させる力)です。それらを総称して、本書では「使える学力」と呼称しています。
概念を砕く力—言い換えができる子
私は授業中、3年生の生徒に向かって、次のように指示を出すことがあります。
「じゃあ、今回は中学1年生用につくるから、中学1年生でもわかるように書いてね」
これは、生徒が書いた論語の解釈を1年生に渡し、実際に読んでもらって意味がわかるかを確かめ合う実践です。
3年生の誰が書いた文章なのか名前は伏せますが、1年生の教室に置かせてもらって読んでもらい、どれがわかりやすく、どれがわかりにくいかを投票してもらい、その結果をもとに3年生の授業を行います。
また、私はRPGゲームの『ドラゴンクエスト』が好きなので、ドラクエで説明してもらうこともあります。「もし○○だったら〜」と、たとえ話を使った言い換えですね。
以前、「走れメロス」の単元で「メロスは激しい怒りに突き動かされて、無謀な決断をした」という生徒の発言を受けて、「『無謀』とはどういうことか、たとえ話でわかりやすく説明してみて」と促したところ、次のように答えてくれた生徒がいました。
「自分はスライムなのに、竜王を倒しに行くようなものだと思う」
むずかしい言葉は、単に文節や単語を分解しても砕いたことにはなりません。相手が理解しやすい言葉への言い換え、相手がイメージしやすいたとえ話、比喩を行使することによってはじめて、概念は砕かれます。
最後に、「使える学力」について、留意すべき点を挙げておきたいと思います。それは、一人一人の生徒がこうした諸能力のすべてを一律に身につけなければならないわけではないということです。
実社会に出ると、1から10まですべて自分一人だけで完結させる仕事はありません。(どのような職に就くかにもよりますが)基本はチームで仕事を遂行するはずです。そこには必ず役割分担があり、役割ごとに求められるスキルが異なります。
「適材適所とは、異なる個性が噛み合うようにする組み合わせの最適化だ」とすれば、一人一人の人間がすべての能力を万遍なくもっているよりも、人によってもっている能力が異なっているほうが都合がよいのです。お互いに補完し合えるので、チームにとって望ましい結果につなげやすいからです。
学校では、勉強もできる、運動もできる、絵も歌もうまいし、リーダーシップにも優れているといった、一人で何でもできる(総合力の高い)生徒のほうが、一つの能力に秀でている生徒よりも評価が高くなる傾向があります。それに対して、実社会で活躍する人たちは、「できること」の総合力よりも、個別の能力の精緻化こそ重視します。
授業を通じてAくんは解釈力が上がっていく、Bさんは見通し力が上がっていくのでよいと私は考えています。教師としては、どの生徒にも確実に身につけさせなければならないベースとなる力があります。それらについては等しくつけながらも、プラスアルファのところは個別に伸ばしていけるような指導を心がければいいということです。
本書では、ほかにも「ビブリオバトル」「漢詩ラップ」「置き石授業」「英語との教科横断」「掛詞ギャグ」など、一見すると奇をてらっているように見えて、学習指導要領や教科書にしっかり準拠しつつ、生徒の学力を着実に向上させる実践の考え方と方法を掲載しています。