月刊 理科の教育2023年10月号
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商品説明
特集:チームで理科の課題に挑む!
イベント・大会への参加を通じて養われる資質・能力とは
10年前の2013年に始まった「科学の甲子園ジュニア」と、2012年に始まった「科学の甲子園」は、中学生と高校生を対象とした理科のイベントで、毎年、各都道府県の予選と全国大会が行われています。「甲子園」「全国大会」というと、スポーツと同様に勝利至上主義的な指導が心配ですが、この催しをきっかけに理数教育に関する多様な取り組みが各地で行われるようになりました。
地方予選を充実させて独自の理科の大会を開催し、県内の理科教育の振興に取り組んでいる県があります。また、生徒が大会に参加したいと先生に頼んで有志を募って参加し、その後にその生徒たちが学校に科学部をつくったという事例もあります。
これらの大会の特徴は、理科の物理、化学、生物、地学の各分野と数学・情報分野の筆記問題と、これらの各分野に関する実技問題と分野を総合した実技問題があること、これらの筆記と実技の両方の問題に6人から8人のチームで解答することです。それぞれのチームは、学校単位でつくる場合が多いですが、いくつかの学校で合同チームをつくって参加する場合もあります。また、各学校の理科部などの部活動で参加することもあれば、校内で有志を募って参加する場合もあります。
生徒たちにとって、チームで力を合わせて理科の問題を解くという経験ができるのは、稀な機会と言えるでしょう。予選でも本選でも、生徒たちはそれぞれが得意な分野の問題を担当して解いている場合が多いですが、普段の問題とは様子が違う(そもそも問題文が長い!)ため、頭を寄せ合ってお互いに相談している姿をよく見かけます。
そして、実技問題がなかなか手ごわいのです。モーターを作るだけでなく作ったモーターで自作の車を走らせたり、LEDの点滅を使って暗号で通信を行ったり、大粒の金平糖の凸凹な表面積を測定したり、生徒たちは皆、四苦八苦しながら取り組んでいます。チーム内で相談できても、限られた時間の中で課題解決に結び付くアイデアを出すのはなかなか大変で、暗記や計算が得意な生徒よりも、ものづくりが得意な生徒や、見通しを立てるのが上手な生徒が活躍しています。
理科の大会にチームで取り組んで課題を解決しようとするプロセスは、勝ち負けや順位(成績)などの結果とは全く別の次元の学びを生徒にもたらしていると言えるでしょう。
本特集では、特に「科学の甲子園」等の理科のイベントの地方予選や各地域の大会に注目し、独自の開催方法や勉強会などに取り組んでいる教育委員会や学校から、それぞれの取り組みと参加した生徒の様子などを紹介していただきます。生徒に求められる理科の資質・能力を評価する視点を改めて考える機会としたいです。
(『理科の教育』編集委員会)