授業を編んで、子どもに伝える。

執筆者: 山内 佑輔

|

前回まで、先生も子どもも「自由(自分に理由がある)」になり、ともに「やりたい!」が生まれる授業づくりについてお伝えしてきました。
今回からは、その授業と授業を繋ぎ、伝える、「編集」「編むこと」について、お伝えしていきます。まずは、子どもに伝える、から始めていきます。

図工の授業は面白い!好き!
全国的にそう思っている子どもたちは多いのではないでしょうか。Benesseや、バンダイ等様々な企業や研究機関で小学生に向けた意識調査が行われると、「好きな教科は何?」という項目があれば、どんな年でも必ずベスト3に入る人気教科です。
ところが、その図工を「学ぶ意味があるか?」と問われて「ある!」と堂々と答えられる小学生はいるでしょうか。 子どもたちは図工が「将来役に立つ」と思って授業に臨めているでしょうか。
僕はこの意識を変えたいと思いました。なぜなら図工は、ものすごく大切なことを学べる教科だからです。

授業(題材)の中に、暗にメッセージを込める先生もいますが、僕はきちんと伝えたい。1年を通じて、その想いを伝え続けたい。そう考えて授業をつくると、1つ1つの授業が繋がっていきます。連続性をもたせると、全体の中での説明がつきますし、子どもたちにとっても納得感があるでしょう。ひとつの作品が「完成! 終わり!」ではありません。図工は作品制作が目的ではないのです。

2014-2020年まで勤めた公立小での取り組みを例にお伝えしていきます。

当時の勤務校は全校児童800名を超える大規模な小学校。1学年だいたい4クラスです。そのため、僕は4〜6年生の図工の時間で、1週間の持ち時間が埋まります。僕と子どもたちが図工室で授業をスタートするのは4年生。それから3年間、ともに図工の時間を過ごします。そこで、各学年最初に授業でその1年間共通するテーマを伝えるようにしました。

4年生では、とにかく「上手い下手なんてない!」ということを1年通じて伝え続けました。

あ! っと自分でひらめく
あ! っと他の人を驚かす
あ! っとみんなでおもしろがる
尊敬している先生の図工室に掲げられていた言葉から

この3つの「あ!」が、4年生のテーマです。取り組んだものがどんなにぐちゃぐちゃだって、失敗したって、全然構わない。この3つの「あ」が達成できれば100点満点。

「先生、これでいいですか?」じゃなくて、「先生これ見て。すごいでしょう?」と言って欲しい。友達のアイデアや作ったものを悪く言わない。だから、図工室内では、誰からも「変だ」とか「違う」とか、そういうことは言われない。だから、この時間は安心して取り組める。どんどん思い付いたことに挑戦できる!そう思ってもらうための1年間です。

子供たちにとって、図工の時間が学校生活の中で最高の時間になりますように。安心して、楽しく取り組める場所になりますように。そういう環境をつくるのが僕の4年生に対するミッションだと考えていました。

そのために、毎年初回の授業は、上記の話を伝えた後に、例えば紙コップや新聞紙をつかったダイナミックな造形遊びからスタートしていました。

「え!?これも図工なの!?」 と子どもたちは驚きますが、授業の終わりに、

「自分でひらめく、“あ!”は、この時間にあった?」と尋ねると毎年どのクラスも100%「あった!」と言ってくれます。

「じゃあ、これを家でひとりでもやりたい人?」と尋ねると、(稀に数人手を挙げますが)みんなで取り組むから面白いことに気が付いてくれます。

そして、誰かを驚かすことについては、みんなのアイデアに何より僕が驚いているんだ。と伝えます。これに嘘はありません。本当にすごいと思うのです。

こうすると、僕が冒頭掲げた3つの「あ」は、初回の授業にして大概達成されています。 それでいい。このまま1年間、よろしくね!というのが毎年の図工開きでした。

そして2回目の授業は、連載第6回目で取り上げたカラフルペーパー工場へと繋げていました。

こうして、毎回の授業は全て「子どもたちが上手い下手はないという意識をもてる」「子どもたちが安心してチャレンジできる雰囲気づくり」「僕自身が驚き続けたい」という軸をもって授業を考えます。これが僕のつくりたい授業です。そうなると、扱う材料や、テーマは違えど、自然とそれぞれの授業は繋がってくるのです。子どもたちには都度、3つの“あ”を確認して、意識してもらっていました。

4年生の1年間で「図工、最高!」となってくれる子どもたち。ただ、「図工は勉強じゃない」「図工は遊び!」と思う子もいるようです。
そんな声から、図工を学ぶ価値と意味を伝えていこうと思いました。

5年生の最初の授業ではこんな話をします。

*****

図工って何で小学校で学ばなきゃいけないんだろう?

1+1=2
カーボンオフセットとは、何を保護するものですか?答えは「森林」
学校で学ぶことの多くには「答え」がある。

では、こんな問題はどう?
「世界中の誰もが欲しい!と思う商品って?」
「23歳になった君に、最もふさわしい職業は?」
「世界から戦争をなくす方法は?」
 

そう、「答え」は1つじゃない。
もしかしたら「答え」なんて、ないかもしれない。

人生には「答え」はない
だから、

一生懸命考えて、悩んで、
みんなで考えて、
一番いい方法を探す/つくる/やる。

みんなこうして頑張っている。お父さんも、お母さんも。
先生も。多分、君も。
この大事なことを、学校ではどこで学んでるの?

子供たちはニコニコ答えてくれる
「図工だ!!」
 

*****

遊びみたいだと思っていたけど、大切なことを学んでいるんだ。遊びながら学べるなんて、いよいよ図工ってすごいぞ!なんて思ってくれたら嬉しいです。

5年生の授業では、空気、風、水、音、言葉、算数、社会、学校行事…
図工を子供たちの身の回りのあらゆるものと結びつけるようにしています。
願わくば、授業の前と授業の後では視点が変わって、日常がちょっと楽しくなっちゃう。そんな授業を目指していました。

5年生でオノマトペを扱う授業をした時のエピソードです。校舎の中で聴こえてくる音を採取しました。耳に集中すると、普段当たり前に過ごしている校舎の中に、今まで聴こえてこなかった音がたくさんあったことに気付いてくれます。この授業の翌日、朝から登校してすぐに子どもたちが図工室に来てくれて「ねぇ!俺の靴の足音はさ、ガサッガサッ!だったよ!でね、友達の音はまたちょっと違うんだよ。朝から面白かったよ!」と教えてくれました。

別のケースで、水をテーマにした授業をしました。普段は流れていく水の動きを、カメラに収めることによって、水を捕らえてみよう。といった内容です。授業後半では、それぞれの水の写真を鑑賞すると、水の美しさを改めて感じずにはいられません。「今まで雨の日は嫌だなと思っていたけど、これからは雨の日が少し楽しくなりそう。」という言葉がたくさん聞こえてきたのが印象的でした。

これらの活動に、正解なんてひとつもありません。

一生懸命考えて、悩んで、
みんなで考えて、
一番いい方法を探す/つくる/やる。

5年生では都度この言葉を確認します。 このプロセスを踏んで、それぞれが価値をつくっていくのです。

そして、図画工作の学びは教室の中で閉じていない。身の回りの日常と繋がっているのです。 それに気が付き、驚き、みんなで面白がるための非日常。それが図工室であり、図工の時間なのです。

僕はこうして授業と授業とを繋ぎ、年間を通したメッセージを投げ続けます。

ログイン

パスワードをお忘れですか?

ー初めてのご利用ですか?ー
アカウント作成

}