入門期の学びを支え、ふりかえるための板書 ✕ ICT

執筆者: 沼田拓弥

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教材:「はなのみち」(光村図書1年/全8時間)

実践者:猪岡 養子先生(秋田県・公立小学校)

本時のねらい: ①語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読することができる。(知 ⑴ ク)
②場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体をとらえることができる。(思C ⑴ イ)

沼田先生:Q:今回は1年生の入門期(5月)のご実践ということで、様々な工夫やご苦労があったのではないかと察します。猪岡先生は今回、どのような点に考慮して単元を考えましたか?単元導入にあたる第1時の内容を中心に教えてください。

猪岡先生:A:入門期の文学作品ということで、子どもたちに「お話がすき」「国語が好き」という気持ちをもってもらいたいと考えました。そこで、板書を工夫し、挿絵から物や生き物を見つける活動、劇作りなど、子どもたちと一緒に遊びのような感覚をもって学びを作りたいと考えました。しかし、遊びのような学びであっても、教師のねらいをしっかりもつことを大切にし、軸がぶれないように気を付けたことで、子どもに力を付けることもできると考えました。 今回、付けようと考えた力は次の3点です。

  • ①言葉をたくさん見つけようとする力……教材の文字数が少ないので、挿絵から言葉を見つけさせました。そこから、様々なものを想像させたり、生活経験と結び付けさせたりして実感のある語彙数を増やすことが大事だと考えました。
  • ②場面を想像しながら音読しようとする力……1文字ずつ読む子どもが多い時期です。毎時間様々な手法で音読させることで、言葉のまとまりが分かり、想像する力のベースを育むことを期待しました。
  • ③友達と一緒に学ぼうとする力……様々な幼稚園や保育園から来ている子どもたち。協働的な学びの場を作ることで、一緒に学ぶことの楽しさを感じるとともに、よりよい人間関係を作っていきたいと考えました。

第一次では、初発の感想をまだ書くことはできないので、話し合いで補いました。気になる登場人物や出てくる回数(算数の指導とのつながり)、好きな場面とその理由などを話し合いました。そこから、単元の計画を組み立てました。

第1時の板書写真
学習内容
1 「はなのみち」を初めて読んで、あらすじをつかみ感想を話し合う。
2 第1場面からくまの部屋にあるものやくまがしていることを見つけて言葉や文にする。
3 第3場面からくまやりすの会話や行動を想像し劇を作る。
4 第2場面と第4場面を比べて、季節の変化を考える。
5 全時間の板書をタブレットを使って見直し、学習を振り返る。
6 全時間の板書をタブレットを使って見直し、学習を振り返る。
7 班で解決したい問いを考え、タブレットで表現する。
8 班で考えたことを全体で共有し話し合う。

「遊びのような感覚」を大切にした授業づくり
子どもたちと自由に語り合う教室には、多くの言葉が生まれます。今回の「ふくろ」のように想像力をはたらかせながら読む部分を設定することで、言葉の幅も広がります。言葉だけでなく、挿絵をヒントにしながら自然と「対比関係」に気付かせる工夫も板書から感じました。第2時以降の思考の土台になる学びがたくさん詰まっています。登場人物が出てくる回数を数えたことも、子どもたちにとっては「遊び感覚」だったのかもしれません。全員が楽しく授業に参加するための大切なポイントです。

沼田先生:Q:遊びと学びのつながりを大切にしながら単元を組み立て、1時間1時間の言葉の学びを積み重ねていかれたのですね。「学びの積み重ね」という視点から振り返ると、第2時〜第3時はまさにスモールステップで全員が学びに参加できるような配慮が随所に感じられます。猪岡先生は、板書の工夫として、どのような配慮(手立て)を意識的に行いましたか?

猪岡先生:

第2時の板書写真
第3時の板書写真

A:どの子も参加できるように、まずは、大型テレビに挿絵を映しました。そして、見つけたものを電子黒板上に印をつけさせてから物の名前を言わせました。子どもたちは、瓶詰めの絵を見て、「レモンシロップだ」とか「蜂蜜だ」とか「キャンデーだ」とか同じ絵なのに想像する物の名前が多様でした。子どもの生活経験が反映されていておもしろく感じました。子どもたちが白熱したところです。「はなのみち」の後には「ぶんをつくろう」という単元があります。そこでは、「誰は(が)・どうする」の文型を使って書く力を身につけます。その学びを意識して次のようなことを行いました。「くまはさがす」「くまがふくろをもつ」など、「誰が・どうする」の文系に合わせて、挿絵を手がかりに様々なくまの様子を見つけて話させました。

板書の工夫としては、「誰が」「何を」「どうする」ごとに3色で色分けして提示したことです。子どもたちは色分けしたことで考えやすくなりました。部屋の物やくまの様子を見つけたあと、「くまは種だって分かっているかな」という問いが出ました。分かっている派、分かっていない派に分かれましたが、子どもが本文に「おや、なにかな」と書いてあることに気付き、「種と分かっていないから、何かなと言った」という発言をしました。それは、「だからりすに聞きに行く」という発言につながりました。最後に今日の分かったことを子どもに尋ねると「文字や挿絵をよく見ると分かる」とまとめていました。

3時間目も同様で、くまとりすの様子を想像し文にしたり、劇にしたりするなかで、新たな問いが生まれ、授業後半に話し合いました。その問いは「なぜくまはりすに聞きに行ったのか」です。「友達だから聞きに行く」のほかに「りすは木の実や種のことを詳しく分かっている動物だ。だから、くまはりすに聞きに行ったのではないか」という考えも出ておもしろかったです。 また、第3場面の板書では、子どもが目で追えるように、矢印(赤色の部分)を書きました。劇の台本として黒板を使いたかったので、どのように流れていくのかを一目で分かるように工夫したものです。

視覚に刺激を与える工夫で「気付き」が生まれる
どちらの授業も、チョークの色や矢印の工夫で子どもたちに「気付き」をもたらしている授業です。言葉を分類し、色によってそのまとまりを示すことで「あっ!」という子どもたちのつぶやきが聞こえてきます。「黄色は……」とか「青色は……」といった形でそれぞれの色の意味を説明させることで、さらに言葉の力を育むことができます。また、矢印は物事の関係性をシンプルに提示できます。今回は、登場人物のセリフのやり取りが交互に行われることが一目で分かるようになりました。ちょっとした板書の工夫で「気付き」が生まれます。

沼田先生:Q:「確認読み」から「解釈読み」へとつながる授業ですね。授業にこのようなつながりをもたせることは、全員の学びを保証する上でとても大切な視点ですね。では、その先の「解釈読み」である第4時の授業について詳しく教えてください。

猪岡先生:

第4時の板書写真

A:第2・4場面を対比した板書では、まず、挿絵から分かることをどんどん出させました。それを教師が項目ごとにレイアウトして板書に残します。子どもは自由に発言していても、なんらかの関係性が見えるように工夫しました。上段下段に分けて書き、上にいる生き物が下にはいない部分には×を書きました。上は、たくさんの物や色があり、明るいイメージであることに気が付きます。一方、下は、×が多いので、生き物は少なく暗いイメージであることに気付きます。また、家の外にいる、家の中にいるなどの違いに対する気付きもありました。季節は最初から問題になっていましたが、子どもは季節の順番が分からないので、ここで、春夏秋冬を図で教え、挿絵がどの季節かをしっかり考えさせました。上が春、下が冬であることを理解しました。

最後に板書を振り返らせ、まとめを言わせたときには、「生きている」とか「春は面白いが冬はつまらない」などの気付きを表現していました。

対比することで見えてくるもの
第1時でも触れた「対比関係」をより詳細に読み取っている授業です。このように、板書にも「学びのつながり」が感じられるような工夫はとても大切です。思考のパターンを身に付けることで、子どもたちの言葉はアップデートされます。また、物語には必ず「空所」が存在します。今回は、冬の場面に多くの「空所」がありました。猪岡先生はそれを「×印」として可視化しました。これは、対比型の板書で整理したからこそ、見えた部分です。対比することで生まれる学びの一つの姿です

沼田先生:Q:第4時までの授業の後、子どもたちはICT(MetaMoJi ClassRoom)を活用して自分たちの学びを振り返ったのですね。板書の活用法として、非常に興味深く感じました。実際、学びの振り返りに板書を活用したことで子どもたちからはどのような反応がありましたか?

猪岡先生:

第6時の板書写真
MetaMoJi ClassRoomを活用した子どもの振り返りの画面

A:第4時までの4枚の板書を、本校で活用しているMetaMoJi ClassRoomに送り、振り返らせました。まず、4枚の写真を見て、気になるところをピンクの線で囲ませました。子どもたちにとってタブレットでの学習は目新しく感じられ、楽しく行われたようでした。空所に書き込んだ振り返りには、「授業で分かったこと」を書く子どももいれば、「場面を想像したこと」を書く子どももいました。1年生にとって、単元の学びを振り返る方法はなかなかありません。すぐ忘れてしまうからです。しかし、タブレットで板書の写真をよく見て、丸で囲み、理由を電子ペンで書く。この一連の流れは、学びを思い出させるきっかけになりますし、思い出せるからこそ理由を書くことができました。さらに新しい問いを考えることもできました。これらは、これまでの授業で、声には出さなかったけれども引っかかっていた問いです。それらが解消されずに再度、表現されたものと考えています。

子どもから出た問いは6つに整理されました。そして、好きな問いを選択し、ネームカードを黒板に貼らせました。ここでは、問いの質は問題にしませんでした。この時期に問いを考えられたことを認め、解決しようとする態度を育みたかったからです。

今日の学びを振り返らせると、「仲間と力を合わせていろんな物を探す」という言葉が出ました。様々な問いを班で協力して答えを出していこうとする気持ちが表れていると感じました。そして、この言葉は次の班学習のめあてにもつながりました。

板書写真を振り返り活動に活用する
ICTの活用方法として、とても効果的な事例だと思います。板書写真には子どもたちの「学びのプロセス」が示されています。「毎時間、どのように学んだのか」が板書写真を改めて見つめることで、子どもたちの頭の中に蘇ってきたはずです。「丸印を付ける」という方法も1年生にはぴったりの共有方法ではないでしょうか。丸印を付けるだけでも、ズレが生じます。ズレが生じることによって「なぜそこに印を付けたのか」を知りたくなり、学びの必然性が生まれます。板書は授業中だけでなく、授業後にも活用することができるんですね。

沼田先生:Q:振り返り活動を行なったことで、子どもたちから新たな「問い」が生まれたのですね。最後の授業では、まとめの部分を見ると国語としての学びはもちろん、学級経営にもつながる子どもたちの学びを感じました。最後に、猪岡先生の感じた単元全体を通した子どもたちの成長について教えてください。

猪岡先生:

第6時の板書写真

A:子どもたちが解決したい問いを班でタブレットに記した後、全体で共有し、意見の交流をしました。板書には、その時の班の話を聞きながら、考えた意見を付け足していきました。カタツムリのところでは保育園で育てたカタツムリの話や本で知ったことなど様々な子どもの生活体験が出されました。

板書を眺めながら振り返らせたところ、「謎を解決するときは、人を大切にしてその人の方を見て聞くと嬉しい気持ちになること」や「謎を解決するとすごいって気持ちになること」などを話してくれました。言葉の学びから、子どもたちの成長を感じた瞬間でした。

国語授業は学級づくりにつながる
子どもたちの学びの終着点の言葉に感動しました。まさに、言葉の学びを通して、人としての成長が生まれています。国語授業はもちろん言葉の学びを柱に構成されます。しかし、それらの言葉の学びを成立させるためには、自分を大切にし、相手を思いやる態度が必要になってきます。教育の目的は、人格の完成にあります。国語授業の学びを通して、学級をつくり、一人ひとりが「成長できた」と実感できる場にしましょう。

猪岡先生はおそらく、これまでの豊富なご経験の中で培われてきた授業のエッセンスを自然と授業の中に散りばめておられるのだと思います。若い先生たちにとっては「目から鱗」の授業実践です。今回、記事として触れられなかった部分もたくさんあります。ぜひ、掲載されている板書写真の中から、その「エッセンス」を探してみてください。1年生の入門期から、このような言葉の学びを積み重ねていけば、どんどん言葉は豊かになります。これからも板書によって、たくさんの「気付き」に出会う子どもたちの1年間の成長が楽しみです。

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