伏線をとらえ、物語の「おもしろさ」を知る ~「ゆうすげ村の小さな旅館 ―ウサギのダイコン」と「クマの風船」(東京書籍3年下)より~

執筆者: 白石 範孝

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物語の「おもしろさ」には、描かれているエピソードの内容だけでなく、伏線などの構成も大きく関わっています。伏線を意識する読みは、叙述の大切さに気付くことにもつながります。

【今回の「問い」】

「クマの風船」には、どんな伏線があるの?

【習得を目指す力】

伏線をとらえ、物語の「おもしろさ」に結びつく構造に気づく力

授業においては、子どもたち自身が【問い】をもち、自発的に解決しようとすることが大切だと言われます。
そのためにも、授業づくりにおいては、教師が【課題】【活動指示】【ズレ】【問い】【技】の関係を理解し組み立てていくことが必要です。
※「【問い】の解決による汎用的な力の習得」の詳細については本連載の第2回を参照

それでは、「ウサギのダイコン」と「クマの風船」の、実際の授業を見ていきましょう。

「ウサギのダイコン」と「クマの風船」には、次のような特徴があります。

→作品の構成の特徴をとらえることができる。

「ウサギのダイコン」と「クマの風船」は、『ゆうすげ村の小さな旅館』と題された12の物語の中の、1番目の物語と、12番目の物語です。
いずれの物語も、次の点が共通しています。

  • 中心人物……つぼみさん
  • 場所…………ゆうすげ村の小さな旅館「ゆうすげ旅館」
  • 対人物………ゆうすげ旅館にやってくるお客など(実は動物や妖精)
  • 話の展開……つぼみさんが不思議な体験をして、お客の正体に気づく

→構成や叙述による効果に気づくことができる。

2つの物語とも、不思議な人物の正体に結びつくための伏線が、作品中にちりばめられています。
さらに、「ウサギのダイコン」自体が、「クマの風船」の伏線ともなっています。
この伏線を読んでいくことが、謎解きの面白さとなっています。

今回は特徴1として挙げた「構成や仕掛けが共通している」に着目し、子どもたちに「伏線」の意味やそのはたらき、伏線を読むおもしろさに気づかせる授業を組み立てたいと思います。
子どもたちに、次のような【問い】をもたせることを目指します。

【問い】
「クマの風船」には、どんな伏線があるの?

子どもたちに物語の構成や叙述と「おもしろさ」との関係に関心をもたせるため、次のような【課題】を示しました。

【課題】
「ウサギのダイコン」の伏線を見つけましょう。

「伏線」とは、物語の中で、一見無関係に思える事柄が、後になってその後の展開に深く関わってくるもので、物語の「おもしろさ」と深い関係があります。
このことをおさえた上で「ウサギのダイコン」を見ていくと、つぼみさんが、美月がウサギであることに気づくまでに、次のような伏線があることがわかります。

  • だれもいなかったはずの道ばたでのひとりごとを、美月が知っていた。
  • 「美月」「宇佐美」という名前。
  • タンポポの花とヨモギの葉っぱをつんできた。
  • ダイコンづくしの料理を食べると、耳がよくなる。
  • ウサギダイコンには、耳がよくなる魔法がきいている。

これらの伏線によって美月の正体が次第に明らかになっていくことが、「ウサギのダイコン」のおもしろさとなっています。

「ウサギのダイコン」で伏線のおもしろさに気づいた子どもたちは、構成が共通している「クマの風船」にも伏線があるのではないかと考えるようになり、次のような【問い】が生まれます。

【問い】
「クマの風船」には、どんな伏線があるの?

※今回は【ズレ】は生じません。
この連載でこれまでに紹介してきた授業の展開例では、子どもたちに【ズレ】を生じさせ、それを【子ども自身から生まれる問い】に結びつけてきました。
「問いの解決による汎用的な力の習得」がテーマです。 しかし、【ズレ】はあくまでも手段にすぎず、「問いの解決による汎用的な力の習得」というテーマに結びつくのであれば、今回のように【ズレ】を生じさせない授業でも問題ありません。

まず、つぼみさんが、熊井さんがクマであることに気づくための伏線として、

  • 体が大きいが、声は小さい。
  • 「熊井」という名前。
  • 山に畑をもっているひとしか使えない、「霜やけをふせぐ薬」をとどけにきた。

などが見つかります。

しかし、この物語にはそれ以外にも伏線があります。

〈つぼみさんが、ウサギの美月さんと再会することになるための伏線〉

熊井さんから、手紙をとどけたい人のところへ飛んでいってくれる風船をもらった。

去年の春に工事のために泊まった六人が、今年も来ることになった。

さらに、「クマの風船」の中だけでなく、「ウサギのダイコン」も含めて考えると、次のような伏線が見つかります。

〈つぼみさんが熊井さんから風船をもらえる伏線〉

宇佐美さんに、やまの畑を貸している。

〈六人が、どうしても、もう一度ゆうすげ旅館に泊まりたいと思うようになる伏線〉

六人のお客が、ダイコンづくしの料理を気に入った。

このように『ゆうすげ村の小さな旅館』には数多くの伏線があります。
この伏線によって、物語の「おもしろさ」が、より深まっていることをおさえます。

今回は、物語の「おもしろさ」を生み出す仕掛けの一つである「伏線」に注目してきました。
物語の「おもしろさ」とは、読み手の心をかきたてるために、物語の中に仕組まれた設定や構成、語り手の視点などの工夫、技法、演出などの「しかけ」です。
いわゆる「面白おかしい」の「おもしろさ」ではないことを、子どもたちにしっかりとおさえてください。

伏線が物語の「おもしろさ」を生み出していることや、何気ない叙述でも、その一つひとつをしっかりと読むことの大切さに気づくことが、次学年以降での物語の学習に生きてきます。
なお、「伏線」という用語をこの段階で押さえることも大切ですが、子どもたちの学習状況に応じて、伏線を「しかけ」「ひみつ」などの言葉を使って説明してもよいでしょう。

今回は「【問い】に結びつく【ズレ】」は取り上げませんでしたが、伏線を見ていく段階で、上記のようにいくつもの伏線があることに気づく子どももいるでしょう。
「もっと別の伏線があるよ」という【ズレ】から授業を組み立てることもできると思います。

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