第4回 生徒指導提要を現場の目線で読む

今回紹介するのは、生徒指導提要の「第4章 いじめ」です。この章の執筆を担当させて頂くNPO法人Grow Up理事長の中島征一郎(なかじませいいちろう)です。私は、今回の執筆者の中で唯一教員ではありません。私の子どもがいじめを受け、その対応に1年近く学校と向き合ってきた経験から、「誰にもいじめを経験してほしくない」との思いから、いじめをなくすことを目的にして仲間と共に立ち上げた「NPO法人Grow Up」は8期目になりました。この活動では、保護者向けの講座や、外部講師として授業や職員研修を行っています。他にも、プロのコーチとして保護者の方や学校の先生方の個別相談を受け、問題解決のサポートを行っています。​​改訂された生徒指導提要は、私が講座や研修でお伝えしている内容と共通点が多く、活動の背中を押してもらったと感じています。前回の生徒指導提要では「いじめ」の項目は個別対応の6番目で3ページしかありませんでしたが、今回の改訂で個別対応の1番目になり30ページを超えています。これは法改正もありますが、それだけいじめ問題が重要視されているといえます。

漫画制作:ヤッシー(@84yame1000

私の「現場目線」からみた重要ポイント

私からみた重要ポイントは、「4.3いじめに関する生徒指導の重層的支援構造」と「学校内外の連携」です。

学校内外で重層的に支える仕組みづくりの重要性

「4.3いじめに関する生徒指導の重層的支援構造」では、いじめに対しても時間や対象により関わり方を変えることが書かれています。従来はいじめ発生後の対応に重きが置かれていて、発生させないための学級経営や授業、子どもたちとの信頼関係構築については「今は何もないから」と軽視されてきました。重層的支援構造では、いじめの対応である非日常的なリアクティブと、いじめを起きにくくするための日常的な活動プロアクティブに分けられています。「4.1.4いじめの重大事態」を防止するためには、早期発見や課題対応といったリアクティブだけでなく、子どもたちの日常的な学校生活の中で育むプロアクティブな対応が重要です。

学校内外の連携では、初めて「p.138 警察へ相談する」と記載されました。いじめは犯罪行為であり、14歳未満では罪に問われることはありませんが、いじめをした子どもの成長のためには、児童相談所等外部のより多くの大人と関わることも大切です。「4.4関係機関等との連携体制」では、保護者との連携だけでなく「地域の力を借り、医療、福祉、司法などの関係機関とつながることが重要です。」と記載されています。学校内外の連携もプロアクティブな対応が重要であり「P139関係機関等と連携が図れるように、日頃から顔の見える関係をつくっておくことが大切です。」と記載されています。

また、いじめ対応では特に担任のメンタルケアが重要になりますが、「1.4.1(2)教職員のメンタルヘルスの維持とセルフモニタリング(生徒指導提要P.29)」と記載があり、管理職にはしっかりと対応してほしいと思っています。

図1 管理職が支える組織図
(生徒指導提要P.126「学校いじめ対策組織の例」を元に筆者が作成)

「私の現場」で生かすとしたら

いじめは、状況が多岐に渡り具体的な対応というものはありませんし、すでに生徒指導提要内に書かれている内容について実践されている部分も多いと思います。ここでは、私がコーチとして、クライアントである学校の管理職や担任に対してどのようにアドバイスするか?という視点で書きました。

いじめの対応で大切なのは、逆算して考えることです。いじめの重大事態に至ると、被害に遭っている子どもや家族だけでなく、担任や管理職だけでなく、学校全体が疲弊していきます。そのような重大事態を発生させないために、どのような準備を行うか、プロアクティブからリアクティブではなく、リアクティブのためにプロアクティブがある、と考えることが大切です。

いじめの重大事態を予防するために、管理職が取り組むべき課題とは

管理職の役割は、学校経営と関係機関等との連携です。いじめの重大事態を防止するだけでなく、発生したときの対応にも備える必要があります。法令に則った報告も必要になりますし、教育委員会をはじめとする関係機関等との連携が重要になります。責任者として全体を把握し、担任や関係機関等に任せっきりにせずに判断し続ける必要がありますから、事前に生徒指導提要を反映したフローチャート等で流れを把握することが大切です。

ですが、管理職がいくら流れを把握しても、先生方から情報が上がってこなければ対応できません。そのためには、先生方にとって職員室が安心安全な場所となるようにマネージメントする必要があります。先生方が不安や不満を抱えていては、不都合な情報が報告されにくくなりますし、何より子どもたちにとって安心安全な学級経営はできないでしょう。特に担任のメンタルケアは重要ですから、日頃から信頼関係を構築することで、いじめ対応時のバーンアウトを予防できます。メンタルケアは、担任だけでなく管理職も重要です。管理職は他者からケアされにくいポジションですから、自分で相談できる相手を見つけることが大切です。

また、責任者として状況を判断していく必要があります。トップダウンやボトムアップといった言葉ではなく、いじめの状況だけでなく担任や関係機関等の意見を把握し、最適な判断と指示を出す必要があります。教育委員会の代弁者ではなく、学校のトップとして、子どものために学校が取るべき選択をしたいものです。

学校経営と同じように、教育委員会や関係機関等とも日常から連携する必要があります。いじめが起きてから初めて会う、のではなく、何も起きていないときにこそ顔を合わせ、気軽に相談できる関係を構築する必要があります。ただし、各関係機関等の負担を考えると、教育委員会等が取りまとめるのが現実的だと思われます。

保護者や学校内での関係づくりを常日頃から心がけよう

担任の役割は、子どもたちとの関わりと保護者連携、学校内での情報共有です。いじめの発生を想定して、日頃から関係性の構築や情報共有が大切になります。この記事を読んでいる方は、子どもたちと関係構築できている方が多いと思いますが、保護者や学校内での情報共有はどうでしょうか?子どもたちとの関係構築ができていても、学校内や保護者との関係性が低い先生が多くみられます。トラブルの報告や相談は誰もが苦手とすることですから、トラブルのない日頃から自ら関わっていくことが大切です。

10年目以降の方や後輩が多くいる方であれば、自分だけでなく後輩のサポートも重要です。若手だけで解決しようとすると、いじめが発生したときの対応が後手後手になり、重大事態へ発展しやすくなってしまいます。個人ではなく組織で教員をしている、という意識をしっかりともっておきたいですね。

生徒指導提要第4章を読み終えて

いじめには、これをやれば大丈夫!といった模範解答はありません。担任の学級経営に問題があるから起きるものではありませんし、いじめはダメだと言葉や態度だけで子どもたちに押しつけても、それは隠に籠るだけで真の意味での防止にはなりません。

また、生徒指導提要に書いてはいませんが、トラブルと呼べるような小さないじめを対応しながら、子どもたちで解決する力を育むことも大切です。

いじめは一人で対応できるものではありません。いじめは担任だけで、学校だけで対応するものではありません。子どもを守るために、学校も保護者も関係機関等も仲間として対応していくことが大切です。

いじめをなくすためには、知識だけでなく実際に行動し続ける必要があります。その行動のために、この記事が少しでもお役に立てば嬉しいです。

グラレコ:松本さおり

次回2/24(金)公開では、相磯良太先生の第5章「暴力行為」についてお伝えします。

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