第13回 生徒指導提要を現場の目線で読む

章の紹介もいよいよ最後となりました。取り扱うのは「生徒指導提要」の第13章「多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導」。執筆担当の吉野嵩史(よしのたかし)です。よろしくお願いします。さて、本章は「多様な背景を持つ児童生徒」と銘打っているように、「発達障害」「精神疾患」「健康課題児童」「困難家庭児童etc」といった様々な項目で構成されています。我々が想像している以上に、こういった児童生徒、家庭の存在は身近です。多様な背景を持った児童生徒への生徒指導方針を見誤ることがないよう、本稿一読後は、是非とも「生徒指導提要」第13章を直接読まれることをお勧めします。

漫画制作:ヤッシー(@84yame1000

私の「現場目線」からみた重要ポイント

私は、本章を含めた「生徒指導提要」全編を、以下のキーワードでまとめて理解しています。

「観察・理解・把握、そして連携」

このキーワードをもとに、改めて改訂版の「生徒指導提要」を読み解いていただきたいです。13章を含めた多くの章が、読み手である我々教師の「観察・理解・把握、そして連携」を行う際の助けとなる内容で構成されているはずです。以下で詳しく説明したいと思います。

観察・理解・把握

「観察・理解・把握」は、主に子どもたちに対して行うものであり、生徒指導に必須の教育的行動です。「生徒指導提要」には、これらをより適切に行うための前提条件、基礎的情報が、豊富に記載されています。
今回は、本文「13.1 発達障害に関わる理解と対応」の内容を用いて説明したいと思います。まず、以下の質問に答えられる方は何人いらっしゃるでしょうか?

・ 障害者差別解消法とは?
・発達障害の定義とは?
・発達障害児への指導時に考慮すべきことは?

これらすべて、「生徒指導提要」13章で詳細に説明されています。こういった情報を知らずに子どもたちを観察し、理解と把握に努めようとする場合と、知った上で努める場合とでは、結果に大きなちがいが生まれてしまうように思います。

「観察・理解・把握」における最大目標は「子どもたち一人ひとりを、可能な限り正しく『知る』」ということに尽きると考えています。これができなければ、「その子」に手立てを打つことも、その後の「連携」に繋げて動いていくことも、すべてが「その子」にとってプラスに働かなくなるかもしれません。私自身、まだまだ読み込みが足らない部分は大いにありますが、「生徒指導提要」は、自分の中により適切な「観察・理解・把握の『モノサシ』」を与えてくれます。

連携

私の思う、本章のみならず、「生徒指導提要」全編における重要キーワードが、この「連携」です。子どもたち一人ひとりのことを深く知るほど、多くの課題が見えてきます。たとえば、行政が積極的に介入すべき児童は以下のように書かれています。

(「生徒指導提要」p.283より引用)

「生徒指導提要」には、虐待、非行、貧困、ヤングケアラー、若年妊娠等、「学校職員のみで責任を追うべきではないもの」が明確に記されています。
この他にも、発達障害、精神疾患、健康課題児童等においても、校内、校外でチームを組み、協働して生徒指導に当たることの必要性が随所に記されています。
学校のみならず、もしかしたら社会規模で、こうした「連携」を積極的に図らねば解決できないような問題が増えてきたのかもしれませんね。子どもたちが抱えている背景は実に様々であり、根が深いものも少なくありません。広く浅い知見ではなく、広く深い知見が必要なのです。一人の教員では到底対応できません。
だからこそ、様々な経験や強みをもった校内の先生方が知恵を出し合える組織づくりと、深い専門知識や多面的なアプローチの方法をもっている校外の専門家や施設と繋がり頼れる体制づくりが必要なのです。
一人のスペシャリストよりも多くの人たちと繋がり強みを生かすことが、結果的に多様な背景をもつ子どもたちを救うことに繋がるのではないでしょうか。生徒指導提要全体で「連携」の必要性が叫ばれている理由はここにあると思います。

「私の現場」で生かすとしたら

ありがたいことに、私がこれまで勤めてきた学校はこうした「観察・理解・把握、そして連携」を丁寧に行っているところでした。
ですが、そんな我々の尽力をあざ笑うかのごとく、時代と共に、新たな問題は学校内外で発生し、その都度「生徒指導」は追われています。
今回の改定は、そのことを暗に示していたように私は感じました。

根本的解決のためにどうしたらよいのだろう…私が考えた答えの一つは、
「子どもたちを『連携することが当たり前な大人』へと地道に育てていくこと」でした。

「生徒指導提要」では、ほぼ全編に渡り「連携」の必要性を説いています。おそらくそれは、今後も重要視されることでしょう。
では、それを担っていく「未来の大人」は誰でしょう。そう、目の前の子どもたちですね。
そうであるならば、未来の大人である子どもたちにこそ、我々は「連携し支え合っていくことの重要性」を伝えていくべきではないでしょうか?

私は、日々の学習、生活の中で、子どもたちに活動を任せる時間を「意図的に」多く設けています。任せる時間があればあるほど、子どもたちの中で様々な「協働」や「連携」が生まれます。それらを通して、支え合える「仲間」の価値を、毎日子どもたちに語ることもできます。

当然、多くのいざこざや、トラブルも発生します。人間関係に限らず、学力の向上や、自身の生き方等、一人では解決が困難な問題に子どもたちは直面します。ですが、それらすべてがまさに、「連携することが当たり前な大人」へと育つ「栄養」となるのです。適切に「栄養」を蓄え、実りあるものにするためには、「問題を予防する」ばかりでもいけません。時に教師による安全の下で「あえて問題を起こさせ」、仲間や教師と連携しながら解決を目指す機会を設けるという、教師のマインドやアクションが必要です。

そういったマインドやアクションを磨く…それもまた、新時代を生きる教師たちの立派な「専門性」であると、私は考えています。

「生徒指導提要」第13章を読み終えて

「学級経営の改善こそ一番の働き方改革」という話を聞いたことがあります。
学級経営を通して子どもたちを育てていけば、必然的に学級内で起こる問題や課題も減る。結果、学校内での仕事は短縮され、勤務時間にゆとりが生まれる…といったものでした。

今後もおそらく、独力では解決が困難な問題が、学校現場を取り巻き続けるでしょう。
皆様でしたらその際に、「連携することの価値」を十分に理解した大人たち(さらに言えば子どもたち)と共に、解決に向けたスクラムを組みたいですよね。
そういった未来を実現できるかどうか…最大の鍵は、私たちの目の前にいる子どもたちが握っています。

超長期的に見る必要はあるものの、「未来を見据え子どもたちを育てる」ことこそ最大の生徒指導であり、様々な問題解決の根幹となるのではないか。

そんな想いを胸に抱きつつ、今後も真摯に子どもたちと向き合う所存です。

グラレコ:山本晃佑(@koussssssst3

漫画制作:ヤッシー(@84yame1000

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